ウシ体外培養胚における胚盤形成マーカーの探索
書誌事項
- タイトル別名
-
- Exploration of molecular markers for embryonic disc formation of bovine embryos cultured in vitro
抄録
【目的】我々はこれまでに,ウシ胎盤形成を体外で再現するための伸長胚培養系を構築し,一部の栄養膜細胞(TE)を胎盤特異的な二核細胞へ分化させることに成功したが,胎子へ発生する胚盤(disc)が形成されないなどの問題が残った。そこで本研究では移植可能な伸長胚が得られる培養系の確立を目的として,既存培養系の問題点を体内発生胚との組織化学的な比較により明らかにし,disc形成や正常な胚発生の指標となるマーカー分子の同定を試みた。【方法】既存条件で8,10,12および14日間培養した体外培養胚のdiscの形態,細胞数,分化関連マーカータンパク質の発現を調べ,過剰排卵・人工授精後のウシ子宮から回収して得られた同時期の体内発生胚と比較した。10日齢の胚については,内部細胞塊(ICM)とTEを分離し,それぞれについて分化関連マーカー遺伝子の定量的PCR解析を行った。【結果】体外培養胚では培養10日目においてICMの形態が体内発生胚と比較して小さく黒くなり,14日目ではdisc形成が確認できず死細胞が胚の外に排出されている像がみられた。体外培養胚のICMの細胞数は8日目以降増加しておらず,培養10日目のICMの細胞数は同時期の体内発生胚よりも少ない傾向がみられた。一方,ホールマウント免疫染色により内胚葉の発現指標であるSOX17を染色したところ,培養10日目の体外培養胚において発現がみられ,胚盤葉下層の形成が推察された。ICMにおけるOCT3/4およびTEにおけるCDX2の遺伝子発現は,体外培養胚で体内発生胚より低かったが,IFNtauの発現は体外培養胚で高かった。これらの結果から,培養10日目においてすでにICMの形態および遺伝子発現が体内胚と体外胚で大きく異なることが明らかとなり,現伸長胚培養系は胚発生における8–10日の間のdisc形成に関わる環境・因子が欠けていることが示唆されるとともに,OCT3/4やCDX2が培養系改良のためのマーカー分子となりうることが明らかとなった。
収録刊行物
-
- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
-
日本繁殖生物学会 講演要旨集 108 (0), P-66-P-66, 2015
公益社団法人 日本繁殖生物学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205715068032
-
- NII論文ID
- 130005492103
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可