運動主体感と誤差修正に基づく運動学習効果との関連性

DOI
  • 根木 彩香
    畿央大学健康科学部理学療法学科
  • 西 祐樹
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室
  • 西 勇樹
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室
  • 林田 一輝
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室
  • 大住 倫弘
    畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
  • 信迫 悟志
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
  • 森岡 周
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • ―intentional binding課題を用いて―

抄録

<p>【はじめに,目的】運動主体感とは「この運動を行っているのは自分自身である」という感覚であり,運動意図により起こる遠心性コピーと感覚フィードバックの一致によって生じる。近年,運動主体感の評価指標としてintentional binding(IB)が考案され,自由意思行動ではIBが高まることが明らかにされた(Haggard, 2016)。一方,運動学習は運動の予測と結果の誤差を修正することで起こる(教師あり学習)。近年,運動主体感が運動学習に関係するといった仮説が提案されているが,その二つの関係を明確にした研究はない。そこで我々は,IBと運動学習効果の両者を同時に測定できるプログラムを作成し,運動主体感の程度が運動学習に及ぼす影響を調べた。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】健康大学生30名を被験者とし,PC画面上で水平方向に反復運動する円形オブジェクトをキー押しによって画面中央で止めるよう指示した。画面の中心座標から円形オブジェクトの中心座標までの距離(px)を計測し,各セットの平均値を算出した(エラー)。キー押し後,200,500,700msec遅延してビープ音が無作為に鳴るよう設定し,この遅延時間を被験者に回答させ,実際の遅延時間との差を抽出した(IB)。このIB値が低いほど運動主体感が高いことを意味する(Haggard, 2016)。ビープ音は無作為に各6回(計18回)与え,それを1セット計10セット実施した。これらプログラムはLabVIEW(National Insturuments)を用いて作成した。学習特性の違いを分類するために,1セットと10セットのエラーである2変数を用いクラスタ解析を行った。各クラスタにおけるエラーとIBを比較するために,10セットを2セットずつ全5期に分け,Friedman検定を行いBonferroni法で補正した(p<0.003)。エラーとIBの関係はピアソン相関係数により処理した(p<0.05)。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】第一クラスタ(n=11)は学習効果が認められた群,第二クラスタ(n=19)は運動の精度が一定な群に分類できた(p<0.01)。第一クラスタでは,エラーは1期に比べ4,5期で有意に低下し,IBも2期と比較し5期で有意に短縮した。また5期では,エラーとIBの間に有意な相関(r=-0.66,p<0.05)を認めた。第二クラスタはエラー,IBとも一定値を示した。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】第一クラスタは運動学習効果を認めた群であるが,IBも同時に高まり,IBと運動学習効果の間に関連性が認められた。よって,運動学習の促進に運動主体感の高まりが関与することが示唆された。一方,第二クラスタは初期より運動精度が高い者で構成されており,課題自体が天井効果であり,IBに大きな変動を認めなかった。運動学習を目的とする理学療法において,対象者の主体性を引き出す課題が重要であることが本研究によって明確になった。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578500352
  • NII論文ID
    130005608435
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0434
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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