感覚-運動の不一致による異常知覚と身体運動への影響

DOI
  • 片山 脩
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室 医療法人瑞心会渡辺病院リハビリテーション科
  • 大住 倫弘
    畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
  • 高村 優作
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室
  • 西 祐樹
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室
  • 森岡 周
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

抄録

<p>【はじめに,目的】身体運動時は予測される感覚情報と実際に入力される感覚情報の比較が繰り返し行われ,それに基づき運動が制御される。この一連の過程は感覚-運動連関(以下,感覚-運動)と呼ばれている。この感覚-運動に不一致が生じた場合,疼痛を有する患者では,健常者に比べ痛みの増悪,重さの知覚変容,そして異常知覚が惹起されることが示されており(McCabe 2007),感覚-運動の不一致が疼痛を助長すると考えられている。このように,これまでの研究では,感覚-運動の不一致が知覚の変容に影響することが示されたが,それに基づく身体運動への影響は明らかにされていない。本研究の目的は,感覚-運動の不一致による異常知覚と身体運動の変化を明らかにすることである。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】対象者は健常成人10名(27.9±4.3歳)である。鏡を両上肢の間に設置して対象者には右側から鏡に映る右手を見せた。その肢位で両手関節の掌背屈運動を同時に行う条件(鏡対称条件)と一側を掌屈する際にもう一側を背屈させる条件(鏡非対称条件)を毎秒約1回の速さで実施した。コントロール条件は,鏡でなくボードを右側から見せ掌背屈運動を実施した(ボード対称条件,ボード非対称条件)。各条件において1試行は30回の掌背屈運動とし5試行実施した。惹起した異常知覚の種類と強さは,各条件後に14種類の異常知覚を評価する質問紙(Foell 2013)を用いてNumerical Rating Scale(NRS)で評価した。掌背屈角度は電子角度計(Biometrics社製)を用いて計測した。掌背屈運動の最大背屈位から次の最大背屈位までの時間を周期運動時間とし,運動の正確性を定量化するために周期運動時間のばらつきを示す平均絶対偏差(Mean Absolute Deviation;MAD)を求めた。統計学的分析は鏡非対称条件と他の条件との比較をBonferroni法による多重比較検定にて行った。有意水準は全て5%とした。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】異常知覚のNRSは,感覚-運動が不一致した鏡非対称条件で鏡およびボード対称条件と比較して有意に強い奇妙さが惹起された(p<0.01)。異常知覚の数は,鏡非対称条件が鏡対称条件と比較して有意に多く惹起された(p<0.01)。掌背屈運動の周期運動時間のMADでは,左手において鏡非対称条件が他の条件と比較して有意に高値を認めた(p<0.01)。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】感覚-運動が不一致した鏡非対称条件にて,多くの異常知覚が惹起された。また感覚-運動が不一致した左手では掌背屈運動の周期運動時間のMADが有意に大きかった。MADの増大は,運動の正確性の低下(Debaere 2003)を意味することから,感覚-運動の不一致により異常知覚が惹起され運動の正確性が低下することが明らかとなった。末梢神経障害などで感覚-運動の不一致が生じた症例に対しては異常知覚だけでなく,運動の正確性についても評価・アプローチしていく必要性を示唆する結果であると考える。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554663808
  • NII論文ID
    130005608524
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0522
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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