立位時の荷重左右差がバランスに与える影響

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  • ~Functional Reach Testを用いた5種類の荷重率評価~

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>バランス能力の中には①一定の場所に重心を保持する静的バランス,②支持基底面内で重心を移動させる動的バランス,③新たに支持基底面を変更して姿勢変換あるいは身体移動を行う動的バランスなどがある。当院患者においては①の静的バランス保持は可能だが,②③の動的バランス保持が困難なケースが多くみられている。また,中枢・整形疾患等を呈した患者の中には立位時の荷重左右差が生じているケースが多い。バランス能力の評価として簡易的かつ信頼度の高いFunctional Reach Test(以下FRT)は②の動的バランス評価として多く利用されており,転倒リスクとの相関もある。本研究は5種類の荷重率でFRTを実施し,その変化を検討することを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>健常男性41名(年齢34±7.3歳,体重71.5±16.1kg,身長172.2±5.1cm)を対象とした。測定前に動作方法の確認およびストレッチを目的に最大前方リーチを10秒×2回行った。測定は左右重心移動時に過度な回旋が生じないよう両手を合わせ,支持基底面も対象者の骨格ごとに統一し,2つの体重計を用いて行った。開始立位の支持基底面は対象者の骨格毎に統一し,2つの体重計に片足ずつ乗せて行った。測定順はランダムテストツールを用いて5種類の荷重率(利き:非利きa群1:9,b群3:7,c群5:5,d群7:3,e群9:1)を無作為に決定した。検討内容は荷重左右差によるリーチ距離の変化,利き足荷重と非利き足荷重によるリーチ距離の変化を比較した。研究計画段階では荷重左右差が少ないほどリーチ距離が長くなる,利き足荷重群が非利き足荷重群よりもリーチ距離が長くなると予測した。統計解析はT検定のp<0.05をもって有意差とし統計学的に分析した。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>荷重左右差なし群(以下:I群)と荷重左右差あり群(以下:II群)の比較ではI群に最も長いリーチ距離が確認され有意な相関が認められた(p<0.05)。目視であるがI群では足関節戦略,II群では股関節戦略でリーチを行っている対象者が多く見られた。II群の中でも荷重率a・e群とb・d群の比較で有意な相関が認められ,左右差が少ないb・d群のリーチが長かった(p<0.05)。利き足荷重群と非利き足荷重群ではリーチ距離に有意差が認められなかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>今回の結果から,②の動的バランスを評価していく場合に利き足・非利き足を考慮していくことは重要でないことがわかった。しかし臨床でFRTを評価する際に十分なリーチを獲得できなかった例では,荷重率や関節戦略を注意深く観察する必要があることがわかった。今回は健常者を対象としていたことから不安定環境でも高度な姿勢制御が行えたと考える。また,眞野らは転倒高齢者107例のうち33%が側方へ転倒していると述べている。今回は純粋な前方と左右差のある荷重率で前方リーチバランスを検討したが,左右リーチの安定性も評価していくことが,将来的な転倒予測に大きな役割を果たすと示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577993472
  • NII論文ID
    130005608648
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0566
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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