膝窩動脈と膝窩静脈の平滑筋収縮に関与するα-アドレナリン受容体の相違

DOI
  • 大塚 亮
    名古屋市立大学大学院医学研究科薬理学 クロストーク株式会社訪問看護ステーションとんぼ
  • 柴山 靖
    名古屋市立大学大学院医学研究科薬理学 ユマニテク医療福祉大学校
  • 梶栗 潤子
    名古屋市立大学大学院医学研究科薬理学
  • 伊藤 猛雄
    名古屋市立大学大学院医学研究科薬理学 日本福祉大学健康科学部リハビリテーション学科

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>下肢血管における血流分配の調節には,血管平滑筋細胞に存在するアドレナリン受容体(AR:α1-ARとα2-AR)サブタイプが重要な役割をしていると考えられている。しかしながら,その詳細は不明である。本研究は,ラットの膝窩動脈と膝窩静脈における交感神経刺激による平滑筋収縮に関与するα-ARサブタイプの特徴を薬理学的に明らかにした。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>8-10週齢のWistar系雄性ラットより膝窩動脈と膝窩静脈を採取後,実体顕微鏡下にて輪状標本を作成した。グアネチジン(交感神経遮断薬,5 μM),ジクロフェナク(サイクロオキシゲナーゼ阻害薬,3 μM),L-NG-ニトロアルギニン(一酸化窒素合成酵素阻害薬,0.1 mM),およびβ受容体非選択的拮抗薬プロプラノロール(1 μM)を含む95% O2+5% CO2を通気した37℃のクレブス溶液中に,標本をセットした。最初に,各標本で過剰K+(70 mM)による収縮反応を記録した(最大収縮反応記録のため)。次に,α1-ARアゴニストであるフェニレフリン(PE)の濃度依存性反応を取得し,その反応に対するα2-AR選択的拮抗薬ラウオルシン(1 μM)およびα1-AR選択的拮抗薬プラゾシンの効果を検討した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>過剰K+溶液は,膝窩動脈と膝窩静脈をともに収縮させた。過剰K+収縮とPE(30 μM)による最大収縮の大きさは,膝窩動脈>膝窩静脈であった。ラウオルシンは,膝窩静脈でのPE収縮を強く抑制したが,膝窩動脈でのPE収縮に影響を与えなかった。プラゾシンは,膝窩動脈でのPE収縮を濃度依存性に右へシフトさせた。この時のSchild plotの傾きは1.08±0.05(1と有意に異ならない)であり,pA2=9.30±0.04であった。一方,膝窩静脈において,プラゾシンは,ラウオルシン存在下でのPE収縮を濃度依存性に抑制したが,その抑制は非競合性であった(最大収縮を抑制)。</p><p></p><p>【考察】</p><p></p><p>本研究において,平滑筋収縮に関与しているα-ARサブタイプが膝窩動脈と膝窩静脈で異なっていることを明らかにした。つまり,膝窩動脈への交感神経刺激は,平滑筋α1-ARに作用し血管を収縮させ,一方,膝窩静脈に対する交感神経刺激は,平滑筋のα1-ARおよびα2-ARの両興奮により血管を収縮させること,が明らかになった。さらに,ラウオルシン存在下でのプラゾシンの反応が膝窩静脈>膝窩動脈であった。この結果は,収縮に関与するα1-ARサブタイプも両血管で異なる可能性を示唆する。このように,本研究は,生理的条件下での交感神経刺激による血流の再分配に,動脈や静脈の平滑筋に存在するα-ARサブタイプの相違が関与している可能性を明らかにした。</p><p></p><p>【理学療法学研究としての意義】</p><p></p><p>理学療法のエビデンス構築にあたり身体構造・機能の解明は急務である。下肢血管トーヌスの調節機能を明らかにすることは末梢循環を理解する上で重要であると考えられ,本研究成果はその基礎的な知見を提供するものと考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577430656
  • NII論文ID
    130005608685
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0623
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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