経皮的末梢神経電気刺激による中枢性疼痛修飾系への影響

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抄録

<p>【はじめに,目的】経皮的末梢神経電気刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)は,従来運動器疼痛に対する鎮痛作用を有する物理療法のひとつとして用いられている。その鎮痛機序は,内因性オピオイドを介する中枢性疼痛修飾系の関与が考えられており,刺激周波数により関与するオピオイドが異なることが示唆されている。一方,ヒトを対象としたTENSによる鎮痛効果については,刺激部での痛覚閾値上昇に限局した報告が多く,中枢性疼痛修飾系への影響まで含めた検討はほとんど行われていない。そこで今回,中枢性疼痛修飾系の指標とされるtemporal summation(TS)を用い,これまでに痛覚感受性の低下効果が報告されている低周波数(low frequency:LF)および高周波数(high frequency:HF)でのTENSによる中枢性疼痛修飾系への影響を調べた。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は健常成人16名(平均20.5±0.9歳,男性8名,女性8名)とし,全ての対象にLF(4Hz,筋収縮が生じない最大強度:平均12.2±2.0 mA),HF(100Hz,痛みを伴わない範囲での最大強度:平均12.8±2.3 mA)のTENS刺激,またはsham刺激(電極貼付のみ)を片側前腕背側へ各20分間,実施順序はランダムに,24時間以上の間隔を空けて行った。測定項目は,圧痛閾値(pressure pain threshold:PPT),圧痛強度(pressure pain rating:PPR)およびTSとし,各刺激前と直後に測定した。PPRは,PPTの125%強度の圧刺激による疼痛強度をvisual analogue scale(VAS,mm)で測定した。TSは,PPRを10回連続で測定し,1回目のPPRを基準とした各PPR変化量の合計を測定値とした。統計学的解析は,Friedman検定およびTukey-typeの多重比較検定,Wilcoxonの符号付順位検定を用い,有意水準を全て5%未満とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】LF,HFともに全ての部位でPPTは刺激直後に有意に上昇し,PPRは有意に減弱した。また,刺激部では,shamに比べてHFでPPTが有意に高値,PPRが有意に低値を示した。TSは,LF,HFともに全ての部位で有意に減衰し,周波数による差はなかった。shamはPPT,PPR,TSとも全ての部位で変化しなかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】LFは脊髄や吻側延髄腹内側部のμオピオイド受容体を,HFはδオピオイド受容体をブロックし,一次求心性侵害刺激入力を調節することで中枢性感作を抑制するといわれていることから,TENSは内因性オピオイド鎮痛系を作動させると考えられている。今回,ヒトを対象とした本実験において,LF,HFともに刺激部だけでなく対側部や遠隔部といった広汎な痛覚感受性の低下効果を認め,さらに全ての部位でTSの減衰を認めた。TSは上行性疼痛伝達系の感作状態を反映するといわれており,またオピオイドの投与により減衰することから内因性オピオイド鎮痛系の機能評価に適するといわれている。以上より,TENSはヒトにおいても広汎な痛覚感受性の低下効果に加え,中枢性疼痛修飾系を介した鎮痛効果をもたらす可能性が示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554971520
  • NII論文ID
    130005608745
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0723
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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