脳死肺移植術後維持期における運動耐容能と身体組成の変化

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  • 術後5年までの縦断的調査

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>当院は1998年の国内初の脳死肺移植術の成功にはじまり,以来同移植術施行数において国内最多の実績をもつ。本邦における肺移植術後のリハビリテーションに関する研究は,周術期回復過程の報告および単一症例報告が散見されるのみである。近年,呼吸器疾患における運動と栄養管理の重要性は周知の事実であるが,肺移植患者においても術後早期の骨格筋筋力増強と適切な栄養管理による身体組成の改善の重要性が指摘されている。一方,肺移植術後維持期における運動耐容能と身体組成の実態は不明である。本研究の目的は,術後定期検査の追跡調査により,脳死肺移植術後5年間の維持期における運動耐容能と身体組成の縦断的な変化を明らかにすることである。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は当院にて脳死肺移植術を施行し,術後の定期評価において該当するデータが縦断的に得られた症例とした。方法はカルテより後方視的にデータを収集した。調査項目は,退院時から術後5年までの1年毎の定期検査入院時に計測された6分間歩行距離(6MD),BMI,理想体重比(%IBW),除脂肪率,脂肪率,筋肉率とした。身体組成は生体電気インピーダンス方式体組成計(Physion MD,Physion社製)にて計測されたデータを用いた。各調査項目を退院時,術後1,2,3,4,5年の各期間で比較した。統計は各調査項目に対し,期間を要因とする反復測定分散分析を行った後,多重比較検定にはFisherの最小有意差法を用いた。統計学的有意水準は5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>条件を満たした対象は全8症例[平均41.8±13.0歳,全例女性,両肺移植4例(特発性肺動脈性肺高血圧症3例,気管支拡張症1例),片肺移植4例(リンパ脈管筋腫症4例)]であった。反復測定分散分析の結果,筋肉率を除く,全ての項目で統計学的に有意な期間の主効果を認めた。多重比較検定の結果,6MDは術後1年で有意に延長し,さらに術後4年にも有意に延長した。BMI,%IBWは術後2年で有意に増加した。除脂肪率は術後2年から4年の間で有意に低下した。一方,体脂肪率は術後2年から4年の間で有意に増加した。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>運動耐容能は退院時に比べ術後1年から4年にかけて改善を示した。体重,脂肪率は2年から4年にかけて改善を示した一方で,除脂肪率は術後2年から4年まで体重増加に伴う相対的な低下を示した。筋肉率は不変であった。これらの結果より,脳死肺移植術後の運動耐容能,体重,体脂肪率の増加には数年にわたる時間を要すること,さらに,体重,脂肪等の身体組成と運動耐容能との関係の重要性が示唆された。今後,さらにデータを蓄積し,肺移植術後の包括的なリハビリテーションの構築に役立てたい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577835136
  • NII論文ID
    130005608827
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0804
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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