慢性期中枢神経疾患における呼吸筋力と姿勢および運動機能の関連

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  • 脳卒中片麻痺・パーキンソン病での検討

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>慢性期の脳卒中(以下CVA)およびパーキンソン病(以下PD)患者に多く見られる特徴として,脊柱の後彎化があげられる(馬場。2013:Tiple D, et al., 2009)。この異常姿勢は体幹機能の低下だけでなく,歩行能力や呼吸機能を低下させ,活動性の低下をもたらす。これまで姿勢と呼吸機能との関連について高齢者に関する報告は散見されるがCVA・PD患者における報告は少ない。中でも呼吸筋力との関連を示す報告はない。呼吸筋力は,肺活量,咳嗽力の低下を引き起こし,感染症の増加や重篤な肺障害をもたらす。そのため慢性期中枢神経患者の姿勢と呼吸筋力との関連を明確にすることは,慢性期中枢神経疾患における呼吸理学療法の早期介入の必要性を考える上でも重要となる。そこで本研究は歩行が可能な中枢神経疾患(CVA,PD)患者の姿勢・運動機能と呼吸筋力を含めた呼吸機能との関連性について明らかにすることを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は当院デイケアに通所する歩行能力が自立~監視レベルのCVA群10名(下肢Brs:III~VI,男女比6:4,平均年齢68.9±7.7歳),PD群10名(H-Y:III~IV,男女比6:4,平均年齢74.2±7.2歳)とした。呼吸機能はオートスパイロ(AS-507.ミナト医科学株式会社製)を用いて,肺活量(%VC),一秒率(FEV1.0%),最大呼気流量(PCF),呼吸筋力(PEmax,PImax)を計測した。運動機能は10m歩行,FRTを用いた。呼吸および運動機能検査は3回実施し最大値を採用した。次に姿勢計測は椅子座位にて矢状面像をデジタルカメラにて撮影し,画像解析ソフト(Image J Version 1.48,NIH)を使用して,貼付したマーカーから先行研究を参考に体幹角(C7-Th12-大転子),頸胸椎角(耳垂-C7-Th12)を算出した。統計処理は各群において身長,体重,並びに年齢や重症度,そして姿勢・運動項目と各呼吸機能(PImax,PEmax,%VC,PCF)に対してPearsonの相関分析を行いた。有意水準はいずれも5%未満とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>CVA群においてPImaxは10m歩行,PEmaxは頸胸椎角といずれも負の相関(p<0.05)を示した。PD群では,呼吸筋力は姿勢や運動機能との関連がみられなかった(p>0.05)。PCFはCVA群では重症度(下肢Brs),10m歩行と負の相関(p<0.05),FRTと正の相関(p<0.05)を示した。PCFはPD群では年齢,頸胸椎角と負の相関(p<0.05),FRTと正の相関(p<0.05)を示した。PD患者において頸胸椎角は他にも体重,重症度,体幹角と正の相関(p<0.05),FRTとは負の相関(p<0.05)を示した。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本研究は歩行が自立~監視レベルの慢性期CVA,PD患者の呼吸筋力と姿勢・運動機能の関連を検討した。その結果,CVA患者において呼吸筋力は姿勢・運動機能と関連がみられた。一方,PD患者においてPCFが姿勢と関連した。これらの結果は,歩行自立度の高い慢性期CVAおよびPD患者の呼吸障害と呼吸理学療法プログラムを考える上で重要な知見を与えるものである。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554546944
  • NII論文ID
    130005608828
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0803
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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