吸気負荷が呼吸循環動態に及ぼす影響

DOI
  • 佐藤 達也
    京都大学医学部附属病院リハビリテーション部 畿央大学大学院健康科学研究科
  • 宮本 直美
    畿央大学大学院健康科学研究科
  • 右田 大介
    社会医療法人財団親和会八千代病院リハビリテーション科
  • 南角 学
    京都大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 池口 良輔
    京都大学医学部附属病院リハビリテーション部 京都大学医学部附属病院整形外科
  • 松田 秀一
    京都大学医学部附属病院リハビリテーション部 京都大学医学部附属病院整形外科
  • 田平 一行
    畿央大学大学院健康科学研究科

抄録

<p>【はじめに,目的】呼吸・心疾患患者において,最大吸気筋力,最大呼気筋力が有意に低下することが報告されている。最大吸気筋力は,生命予後や運動耐容能と相関関係がみられている。吸気筋力の改善に伴い,最大酸素摂取量や6分間歩行の改善についての報告もあり,吸気筋力に対する,介入が近年注目されている。介入方法としては吸気負荷(Inspiratory muscle loading:IML)にて吸気筋力増強が行われるが,IMLは胸腔内の陰圧を強め,静脈還流量を増加させる。静脈還流量は心臓の前負荷となるため,IMLは前負荷を増加させ,心臓に過負荷となる恐れがあるが,IML中の呼吸・循環動態について詳細に調査した研究は皆無である。そこで本研究はIMLが,呼吸循環動態に及ぼす影響を明らかにし,IMLの安全性について検討することを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】呼吸筋力評価,IMLが可能である健常成人24名を対象とした。電子スパイロメーターにて吸気筋力評価後,吸気負荷装置であるPower Breathe classicを用いて10,20,30,40 cmH2Oの計4種のIMLをランダムに実施し,その間・直後の呼吸・循環動態を評価した。IMLは,吸気時間1.5秒,呼気時間3秒の調節呼吸をパソコンの指示画面に合わせて3分間実施させ,3分間の休憩を行った後,次の負荷へ移行した。呼吸動態は呼気ガス分析器(AE-310S,ミナト医科学)にて酸素摂取量(VO2)を,自律神経活動は心拍計(POLAR RS800CX,ポラール・エレクトロ・ジャパン)にて心拍変動(HF:副交感神経活性度,LF/HF:交感神経活性度)を,循環動態は連続血圧・血行動態測定装置(PORTAPRES,Finapres Medical Systems)にて収縮期血圧(SBP),心拍数(HR)を測定し,ダブルプロダクト(DP:心筋酸素消費量)を算出した。統計解析方法として,各測定項目について反復測定一元配置分散分析を行った。多重比較はTukey-Kramer法にて行い,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】DP,SBP,HF,LF/HFは安静時と比較し,各負荷において有意差が認められなかった。HRとVO2に関しては安静時と40cmH2O負荷の間において有意差を認めた(p<0.05)。各負荷の内,DP,SBP,HR,VO2の平均最大値は,DP:10187,SBP:132.97mmHg,HR:77.49bpm,VO2:5.43ml/kg・min(1.6METs)であった。これらの値はSBPを除き,40cmH2O負荷時で最大値であった。</p><p></p><p></p><p>【結論】各評価項目における最大値と,運動療法の中止基準としては,DPは20000~25000以上の場合,SBPは安静時よりも40mmHg以上上昇した場合であり,HRは120bpmを超えた場合や運動前の30%を超えた場合を中断基準とされている。今回の研究においては上記の中止・中断基準を上回ることなく,安全に実施が可能であった。さらにIMLがもたらす身体への負荷強度としては,40cmH2O負荷の時においても1.6METs程度であることから,健常若年者における40cmH2O以下の吸気負荷は低強度で安全なトレーニングであると考えられた。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554871936
  • NII論文ID
    130005608880
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0769
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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