経頭蓋直流電気刺激と有酸素運動の併用介入が脊髄損傷後の神経障害性疼痛および安静時脳波活動に及ぼす影響

DOI
  • 佐藤 剛介
    畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室 奈良県総合リハビリテーションセンターリハビリテーション科
  • 三上 亮
    奈良県総合リハビリテーションセンターリハビリテーション科
  • 大住 倫弘
    畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
  • 信迫 悟志
    畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
  • 森岡 周
    畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • 脊髄損傷者2名による予備的検討

抄録

<p>【目的】脊髄損傷(SCI)後の神経障害性疼痛(NP)は難治性であり,脳波を使用した研究ではα波の変化が疼痛と関係していることが指摘されている。近年,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)によりSCI後のNPが減少することが報告されている。tDCSは他の治療法との併用介入が効果的とされており,線維筋痛症患者においては有酸素運動(AE)との併用がより効果的であったことが報告されているがSCI者を対象とした検討は行われていない。本研究では,SCI後のNPを有する2症例に対するtDCSとAEの併用介入の効果および安静時脳波活動への影響を予備的に検討することを目的とした。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】実験にはNPを有する対麻痺者2名が参加した。実験はtDCS条件,AE条件,tDCS+AE条件の3条件を無作為に2日以上の間隔を空けて行った。tDCSは左側運動野に相当する部位に陽極,右側眼窩上に陰極を配置して2mAで20分間の陽極刺激を行った。AE条件は自転車用ローラー上で20分間の中強度の車椅子駆動を実施し,tDCS+AE条件では電気刺激と車椅子駆動を同時に行った。疼痛は自発的疼痛強度のNRSを課題前・課題中5・10・15・20分・課題終了後15分経過時点で測定した。気分の評価は,日本語版POMS-Bを使用し課題前後で調べた。安静時脳波の測定は,デジタル脳波計(32ch)を使用し,課題前と課題後10分経過時点で3分間の安静閉眼状態を測定した。安静時脳波の分析は,θ帯域(4-8Hz)・α帯域(8-13Hz)・β帯域(13-30Hz)におけるPower値の平均を求めた。NRSの変化率を各条件間で比較し,POMS-Bは下位項目ごとに課題前後で比較した。安静時脳波については,課題前後のθ・α・β帯域のPower値の変化をチャンネルごとに調べた。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】NRSは3条件とも減少し,変化率はいずれの条件も課題開始後から20分経過時点で最大となった。NRS変化率はtDCS条件(58%)が最大であり,次いでtDCS+AE(53%)・AE条件(50%)の順であった。tDCS+AE条件では課題開始から10分経過時点において他の条件よりも早い時点で疼痛が減少し始めた。POMS-Bの結果は,「緊張―不安」・「抑うつ―落ち込み」・「怒り―敵意」の項目で3条件ともスコアの減少を認めた。安静時脳波の結果は,θ/α/β帯域においてそれぞれtDCS条件:13/18/21ch,AE条件:31/29/31ch,tDCS+AE条件:26/13/14chのチャンネル数で増加性の変化を認めた。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】全条件において,疼痛強度・負の気分状態の改善および安静時脳波活動の増大が認められたことから,それぞれの介入に一定の効果があると考えられる。疼痛強度の時系列変化に着目すると,tDCSとAEの併用では,その他の条件よりも早い時点で鎮痛効果が認められていた。このことから,tDCSとAEの併用は短時間での鎮痛効果をもたらすことが期待でき,運動療法効果を阻害する要因の1つであるNPを有するSCI患者に対する運動療法の効果を促進できる可能性がある。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680555281920
  • NII論文ID
    130005609114
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1062
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ