回復期病院入院中の脳障害患者における各種パフォーマンス評価と歩行自立度の関係について

DOI
  • 佐藤 武士
    偕行会リハビリテーション病院リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>定量的な動作能力の評価として,一般に10m最速歩行時間(10mMWT)やTimed Up and Go Test(TUG),6分間歩行距離(6MD),Functional Reach Test(FRT)などのパフォーマンス評価が行われている。パフォーマンス評価と転倒リスクや歩行実用性の関連の様々な報告があり,当院回復期病棟においても定期的にそれらの評価を行い,病棟ADLでの歩行や退院後の歩行の設定の参考にしている。しかし,いずれの評価を歩行自立判定の参考にするべきか明らかでない。そこで回復期脳障害患者における各種パフォーマンス評価と歩行自立度との関係を調査した。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は2008年3月から2016年4月の間に当院回復期病棟に入院し,監視歩行以上の能力を有した脳障害患者737名とした。</p><p></p><p>測定項目は10mMWT,TUG,6MD,FRTとし,退院日に最も近い測定日のデータを採用した。また歩行自立度を,担当理学療法士が測定日における「できるADL」で判断した。</p><p></p><p>統計学的分析は各パフォーマンス評価と歩行自立度(完全自立7点,修正自立6点,監視5点)の関係をステップワイズ重回帰分析用いて検討した。また監視と自立の要因については多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した。加えてreceiver operating characteristic curve(ROC曲線)を用いて,各パフォーマンス評価における監視歩行と自立歩行のcut off値,感度,特異度,的中精度,area under the curve(AUC)を求めた。なおFRTは測定値(cm)を身長(m)で除した値を用いた。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>ステップワイズ重回帰分析の結果は,6MD(0.54),FRT(0.10),TUG(-0.09)が採択された(括弧内は標準化偏回帰係数)。自由度調整済み決定係数は0.44であった。多重ロジスティック回帰分析の結果は,FRT(オッズ比1.14)と6MD(オッズ比1.009)が採択された(モデルカイ二乗検定p<0.01,hosmer.lemeshow検定p=0.71)が採択された。ROC曲線の結果は,10mMWTはcut off値11.1秒,感度0.73,特異度0.77,的中精度0.76,AUC0.81,TUGはcut off値13.8秒,感度0.78,特異度0.74,的中精度0.75,AUC0.82,6MDはcut off値240m,感度0.77,特異度0.73,的中精度0.76,AUC0.82,FRTはcut off値17.7(cm/m),感度0.73,特異度0.73,的中精度0.73,AUC0.76であった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>ステップワイズ重回帰分析や多重ロジスティック回帰分析の結果から,6MDが最も歩行自立度を反映すると思われる。6MDには速度や持久性などの実用的な要素が含まれるためと考えられる。その他の評価についても,ROC曲線の結果は良好であることから,歩行自立の判断の補助や6MDが行えない場合の代替評価として用いることができると思われる。ただし今回の歩行自立度の判定はあくまで「できるADL」であり,今回のcut off値などの評価の特性が,環境などの様々な要因が加味される実生活場面に必ずしも適用できるとは限らない。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205580121600
  • NII論文ID
    130005609165
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1111
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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