外来リハビリテーションに通院する膝痛高齢者への痛み対処スキルトレーニングの効果

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>膝痛高齢者の代表的な疾患である膝OAは外来リハビリテーションにおいて運動療法が実施され,一定の効果が得られている。しかし,膝痛高齢者は,破局思考や医療行動,不活動など不適切な痛み対処方法を選択することが多く,有効性が示されている運動療法の継続を妨げる。この課題に対して,近年では膝痛高齢者に認知行動療法を取り入れた痛み対処スキルトレーニング(PCST)が実施され,膝痛軽減,身体機能向上,膝痛の自己管理に関連する痛み対処方略や痛みセルフ・エフィカシーの改善が報告されている。しかしながら,これらの先行研究は全て諸外国によるものであり,わが国でのPCSTによる介入効果は明らかにされていない。そこで,本研究では外来リハビリテーションで運動療法を実施している膝痛高齢者に個別でのPCSTをおこない,その効果を明らかにすることとした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は膝OAの診断を受け,外来リハビリテーションに通院する高齢者で採択基準(3ヵ月以上続く膝痛,VAS30mm以上,K-L分類2以上)を満たし,除外基準(認知症が疑われる者,膝関節の手術予定者,膝関節の手術施行者,移動手段が車椅子の者,膝痛や認知行動療法に関する教室への参加経験者)に該当しない25名(男性4名,女性21名)とした。対象者の介入には医師およびPTが対象者の希望を踏まえて健康状態が両群で均等になるように,個別でのPCSTを実施するPCST群13名,健康講話を個別にて実施する健康教育群12名に振り分けた。介入は週1回8週,約20分の介入をそれぞれ実施した。調査項目は基本属性にBMI,痛み持続期間,教育歴,居住人数,現病歴,既往歴,合併症,K-L分類を調査した。効果判定に痛みの程度及び痛みによる活動制限,痛み対処方略,痛みセルフ・エフィカシー,運動セルフ・エフィカシー,下肢筋力,移動能力,3軸加速度計Active style pro(オムロン社,日本)を使用して身体活動量を調査した。解析では介入前後の2群の変化量の差異を共分散分析にて解析した。なお,共変量に性別,年齢,介入前データを設定し,介入中断者を含めたIntent-to-treat解析を用いた。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>対象者の平均年齢はPCST群で75.1±7.1歳,健康教育群で75.7歳±5.9歳であった。また,全ての基本属性において両群に有意な差異は認められなかった。また,ベースライン値においては,PCST群の破滅思考が健康教育群と比較して有意に高かった(p=0.041)。介入前後でPCST群が健康教育群と比較して有意に改善した項目は痛みセルフ・エフィカシー(p=0.005),運動セルフ・エフィカシー(p=0.042),5回立ち上がりテスト(p=0.004),TUG-t(p=0.027)であった。また,有意な改善傾向が認められた項目は痛みの対処方略の下位尺度である医薬行動(p=0.073),中高強度の身体活動量(p=0.052)であった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>PCSTは一般的に用いる健康教育より,痛み自己管理能力,身体機能,中高強度身体活動に有効である可能性を示した。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680555682560
  • NII論文ID
    130005609683
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1601
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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