両上顎洞真菌症に合併した真菌性鼻中隔膿瘍例

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タイトル別名
  • A Case of Fungal Nasal Septal Abscess with Bilateral Maxillary Sinus Mycetomas

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抄録

<p>鼻中隔膿瘍は日常臨床で遭遇することは少ないが,鞍鼻や頭蓋内合併症などを来さないよう適切な対応が求められる。今回我々は,稀な真菌性鼻中隔膿瘍の1例を経験したので報告する。</p><p>症例は89歳男性。発熱,鼻根部痛にて前医を受診し急性副鼻腔炎の診断で入院,抗菌薬治療を受けたが改善せず,当科を紹介受診した。鼻背は腫脹し圧痛を認め,鼻中隔は高度に発赤腫脹していた。副鼻腔CTでは鼻中隔前方の腫脹と左上顎洞に石灰化を伴う軟部陰影を認め,右副鼻腔は全て陰影を認めた。鼻中隔穿刺にて膿が吸引され鼻中隔膿瘍と診断し,切開排膿・ドレーン留置と抗菌薬投与を行ったが改善に乏しく,膿からの糸状菌検出と血清β-Dグルカン上昇から真菌性鼻中隔膿瘍と診断しVRCZの投与を開始した。副鼻腔病変の関与を疑い両ESSと鼻中隔の生検を施行した。両上顎洞内に認めた乾酪様物質は病理学的にAspergillusの菌塊と診断され,鼻中隔軟骨に真菌浸潤を認めた。後日,鼻中隔の膿培養からAspergillus fumigatusが同定された。症状軽快にて第26病日退院となったが鞍鼻は残存した。6ヶ月間VRCZ投与を行い,治療終了後も再燃は認めていない。</p><p>真菌性鼻中隔膿瘍は易感染性宿主や糖尿病合併例,副鼻腔真菌症合併例がリスクといえる。これらの背景を持つ鼻中隔膿瘍患者では,真菌も原因微生物として当初から鑑別に挙げて対応することが必要である。</p>

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