人工知能を用いた流域水収支モデルのパラメータの自動最適化

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  • Automatic optimization of parameters of the drainage basin water balance model using artificial intelligence

抄録

これまでの研究で,分散型タンクモデルを用いた月単位の流域水収支モデルが精度好く流出量の季節変化を再現できることが分かっている(沼尻, 2008)。しかし,複数のパラメータを最適化する方法は,容易であるとはいえない。最適パラメータ探査の取り組みは,タンクモデルの発案者である菅原(1972)は,当時のコンピュータの演算能力では計算に時間がかかりすぎることを理由のひとつに挙げ,自動最適化をあきらめている。しかしその後,パーソナルコンピュータの性能が向上したことから沼尻(2008)は,パラメータを設定した範囲内でループ計算する逐次法により,自動最適化を行った。 さらに最近オープンソースとして複数の人工知能ライブラリが公開され,人工知能の利用が身近になってきた。沼尻(2017)は,流域水収支法と人工知能を用いて空知川流域の月蒸発散量の推定を行っているが,人工知能は月蒸発散量推定式のパラメータ算出で利用されているのみであった。そこで本研究では,分散型タンクモデルを用いた月単位の流域水収支モデルのパラメータ探査に人工知能を組み込むことで,最適パラメータ探査の効率化と流域水収支モデルの精度向上を達成できた。<br> 流域水収支モデルを含む学習アルゴリズムはPython2.7で記述した。最適パラメータ探査にはディープラーニング対応の機械学習・人工知能ライブラリであるTensorFlow(Google)を用いた。パラメータの評価は,流量観測所の流量データと流域水収支モデルが出力する流出量の差の二乗値が最小になるようにし,同時に相関係数が最良になるよう設定した。パラメータの最適化は,確率的勾配降下法とし学習率はAdam法を用いた。<br> 流域水収支モデルは,グリッドごとに配置した積雪・融雪モデルを備えたタンクモデルから出力される流出量を流域単位で集計するものである(沼尻,2008)。人工知能が探査するパラメータは,融雪係数,タンクの深さ,中間流出口の高さ,中間流出率,基底流出率の4つとした。降雨・降雪判別気温は,全ての流域で共通とした。  自動最適化・学習プログラムの学習回数は1000回に設定した。自動最適化・学習プログラムによって良好にパラメータを算出できた。また,パラメータ探査の作業を効率化することが可能となった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696089216
  • NII論文ID
    130006182692
  • DOI
    10.14866/ajg.2017a.0_100108
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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