コレステロールはトランスポーターを介してmTORC1活性を調節する

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抄録

コレステロールは生体膜の必須構成要素であり,細胞の増殖過程で必要とされるコレステロールの生合成と取り込みは様々な機構を介して調節されている.食餌性コレステロールは,主に低密度リポタンパク質(LDL)として受容体介在性エンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれる.その後,リソソーム内腔で分解を受け,フリーとなったコレステロールは,ニーマン・ピックC1(NPC1)とNPC2により細胞質内へと排出され,様々なオルガネラ膜へと選別を受ける.<br>リソソームは,増殖調節因子mechanistic target of rapamycin complex 1(mTORC1)の活性化される場所でもある.アミノ酸などの栄養シグナルはRag GTPaseを介してmTORC1を活性化し,細胞増殖を促すことが知られている.また,mTORC1は脂肪酸やステロールの合成を誘導し,増殖過程の細胞におけるLDLの取り込みを亢進させることも知られている.一方で,食餌性のコレステロール自身もmTORC1を活性化する役割を有すると考えられてきたが,mTORC1が食餌性コレステロールをどのように感知しているのかは不明であった.本稿では,リソソーム内のコレステロールがアミノ酸輸送体でアルギニンセンサーとして機能するSLC38A9とNPC1による複合体を介して,mTORC1の活性化と増殖シグナルを制御するということを報告したCastellanoらの研究成果を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Espenshade P. J. et al., Annu. Rev. Genet., 41, 401-427(2007).<br>2) Krall A. S. et al., Nat. Commun., 7, 11457(2016).<br>3) Düvel K. et al., Mol. Cell, 39, 171-183(2010).<br>4) Castellano B. M. et al., Science 355, 1306-1311(2017).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 53 (12), 1214-1214, 2017

    公益社団法人 日本薬学会

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