島嶼地域における土地資源利用効率の検証

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  • Validation for land resource use efficiency in small islands

抄録

一般に地形が急峻で年間降雨量の多い太平洋島嶼国において,人間活動による過剰な土地資源の利用は,陸域における土壌侵食および海域への土砂および栄養塩類の流出を加速させ,物質循環や生態系の持続性を低下させる.本発表では,筆者らが提案した土地資源利用効率を検証として,各時期における流域ごとの人口密度と土砂流出量を比較することを目的とする.研究対象はパラオ共和国バベルダオブ島で過去の人口データが利用可能な4流域群(Zone)とした.土地資源利用形態が自給自足(1921年),資源開発(1947年),自然保護(2006年)と異なる3時期における各流域群からの土砂流出量をSoil and Water Assessment Tool (SWAT)を用いて推計した.計算期間は2001年から2010年までの10年間とし,10年間の助走期間を設けた.推計した各流域群の土砂流出量を人口密度と比較した.各流域群における人口密度と土砂流出量の関係の近似曲線を比較すると,人口密度の増加に対して,1921年は土砂流出量が増加するものの,1947年はほぼ横ばい(微増),2006年は減少,とそれぞれ増減の傾向が異なった.自給自足の生活では,人口増加による食糧需要の増大が土地開発に直結し,土砂流出量の増大を引き起こした.ただし,1921年のプロットは人口密度50人/km2以下の範囲に密集しており,自給自足ではそれ以上の人口増加が生じなかったと推測される.一方,戦前・戦中に進められた資源開発では,パイナップルやキャッサバ,野菜類等の商品作物やボーキサイトの生産が拡大したが,これらは主に海外輸出向けの生産であり,その流域群に住む人口ではなく,利用可能な資源量に依存していたため,約8ton/haでほぼ一定であったと考えられる.最後に,自然保護の進められている2006年には生産のために土地資源を利用しておらず,住民の食糧はその大半を海外からの輸入に依存している.その際,食糧生産のための土地利用を考慮せず,広くて平らな住みやすい条件に人口が密集しやすいため,近似曲線が右下がりとなったと推察される.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680690244480
  • NII論文ID
    130006236378
  • DOI
    10.11520/jshwr.30.0_84
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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