表面置換型人工肘関節のショート・ステムとロング・ステムの比較検討

書誌事項

タイトル別名
  • A COMPARISON OF BIOMECHANICAL STRESS DISTRIBUTION IN THE SHORT AND LONG STEMS OF UNLINKED TOTAL ELBOW PROSTHESES BY FINITE ELEMENT ANALYSIS
  • 表面置換型人工肘関節のショート・ステムとロング・ステムの比較検討 : 有限要素解析による応力分布の生態力学的研究
  • ヒョウメン チカンガタ ジンコウ ヒジ カンセツ ノ ショート ・ ステム ト ロング ・ ステム ノ ヒカク ケントウ : ユウゲン ヨウソ カイセキ ニ ヨル オウリョク ブンプ ノ セイタイ リキガクテキ ケンキュウ
  • ―有限要素解析による応力分布の生態力学的研究―

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抄録

人工肘関節全置換術は,関節リウマチ,変形性肘関節症,上腕骨遠位粉砕骨折,強直肘やその他の肘関節疾患に対して有用かつ効果的な治療方法である.Kudo人工肘関節は,国内および欧州で最も使用されている表面置換型人工肘関節であり,その理想的なデザインにより,良好な長期成績が得られているが他の人工肘関節と同様に,ときに緩みを生じ,再手術を要することがある.とくに,尺骨コンポーネント先端周囲には上腕骨に比べ約10倍の応力がかかっており,cyclic loadingにより緩みをきたす可能性があることは,われわれの前研究で報告した.尺骨コンポーネントには2つの異なるステム長(ロング・ステム,ショート・ステム)があり,多彩な疾患の治療戦略にあたり選択肢が与えられている.人工肘関節に関する中・長期成績や,合併症に関する報告は散見されるが,異なるステム長のコンポーネントが周囲組織に及ぼす影響についての報告はこれまでにない.本研究ではKudo人工肘関節尺骨コンポーネント周囲にかかる生態力学的な応力分布を,ショート・ステムとロング・ステムついて比較解析し考察した.前研究では人工肘関節が挿入された状態の肘関節のモデルにおいて,角度を準静的に変化させ各角度の肢位保持に必要な筋力を計算した.本研究では3D-CADソフトウェアを用いて4面体要素から成る尺骨・尺骨コンポーネント・骨セメントのより詳細な有限要素モデルを作成し,応力分布を解析した.2つの異なるステム長(45mm,65mm)につき,各肘関節角度での,周囲組織への最大応力値を比較解析した.結果,すべての条件下で尺骨ステム先端周囲の海綿骨・骨セメントに最大応力が見られ,臨床的に緩みが起きる部位と一致していた.ロング・ステムでは肘関節屈曲70°,ショート・ステムでは110°で最大値を示した.また解析した肘関節屈曲-伸展運動のほとんどすべての角度においてショート・ステムでより高い最大応力値がみられた.人工肘関節尺骨コンポーネントの選択についてはショート・ステムの方が高い応力を生じ緩みに繋がる可能性があり,より至適な設置となるよう注意深い術中操作が求められると考えられた.

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