地域包括ケアシステムと救急医療

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タイトル別名
  • Community-based integrated Care System and Emergency Medical Care
  • チイキ ホウカツ ケア システム ト キュウキュウ イリョウ

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抄録

救急医療は、市民が安心して安全に地域で生活するための重要なセーフティネットの一つであるが、超高齢社会や世帯構成の変化、多死など社会問題が複雑となる中、その提供のあり方に変化を求められている。わが国の救急出場件数は毎年増加し、年代別に見ると75歳以上の救急搬送者数は増加の一途を辿っている。都市部で救急需要に応じる医療機関の多くは私的医療機関であり、近年は種々の理由で救急告示医療機関は減少している。その結果、高齢者が住み慣れた生活圏から切り離され、遠方にある医療機関に搬送されることになる。さらに高齢者は、介護者や認知症などの問題で自宅への退院が困難であることも多い。地域で暮らす高齢者に安全で安心な生活を保障するため、円滑に医療が提供されるシステムを構築する必要がある。地域包括ケアシステムは、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」と定義されている。高齢傷病者は、重症や重篤な状態でなければ、まずは地域密着型病院が受け入れ、そこで治療されることが望ましい。在宅医療に従事する医師や地域密着型病院、二次救急病院などに勤める医師は、地域における日常生活に関わるチームの連携の中でコンダクターとしての役割を担うことになる。高次医療機関に勤務する医師は、急性期医療を行った後、傷病者を地域での医療・福祉・生活へ戻すことになる。地域包括ケアシステムの中で医師は、総合的な医療を展開する能力と地域内における連携および地域内外の連携を見渡せる広い視野を身につけておく必要がある。地域における日常生活を支援する社会的な諸機能が協働している中で、高齢者を取り巻く様々な領域と緊密な連携を構築することが、これからの地域救急医療には求められている。

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