化学物質曝露によるアレルギーの悪化と免疫応答のかく乱

DOI
  • 小池 英子
    国立環境研究所環境リスク・健康研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Chemical exposure-induced aggravation of allergy and disruption of immune cell function

抄録

生活環境中には、大気汚染物質や生活用品に由来する化学物質など様々な環境汚染物質が存在しており、それらの一部は、現代病として挙げられるアレルギー疾患との関連性が懸念されている。これまでに、プラスチック可塑剤のフタル酸エステルや、樹脂原料のビスフェノールA (BPA)、大気汚染物質として知られるベンゾ[a]ピレン等の化学物質が、アレルギー性炎症を悪化させること、その要因として樹状細胞など抗原提示細胞の活性化によるTh2応答の亢進を示してきた。<br> 化学物質曝露がアレルギーに及ぼす影響は、必ずしも用量依存的な作用ではなく、むしろ低用量の方が顕著な増悪影響を示す場合がある。例えば、BPAがアレルギー性喘息に及ぼす影響の検討では、一般環境大気中で曝露されうる低用量で肺の炎症(炎症細胞の浸潤、炎症性タンパクの発現等)を増悪し、高用量では影響が減弱するという結果を得ている。また、炎症病態の増悪に並行した肺のリンパ節における抗原提示細胞の活性化に加え、リンパ節と同様に免疫応答の場である脾臓の活性(サイトカイン産生能、細胞増殖能の変動)の変化や免疫担当細胞の産生・動員の役割を担う骨髄における変化(骨髄液中ケモカインレベル、骨髄細胞数の変動)など、免疫担当細胞への影響も観察されている。このように、化学物質曝露がアレルギーに及ぼす影響には、免疫担当細胞機能のかく乱が関与していると考えられる。本講演では、アレルギー性炎症の亢進につながる化学物質による免疫応答のかく乱について、これまでの知見と今後の課題について述べる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680525551232
  • NII論文ID
    130006582239
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_s15-4
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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