術前顎矯正治療における光学印象の試み(第二報)

DOI
  • 長谷川 紘也
    明海大学歯学部形態機能成育学講座歯科矯正学分野
  • 真野 樹子
    明海大学歯学部形態機能成育学講座歯科矯正学分野
  • 品川 令
    明海大学歯学部形態機能成育学講座歯科矯正学分野
  • 藤本 舞
    明海大学歯学部形態機能成育学講座歯科矯正学分野
  • 須田 直人
    明海大学歯学部形態機能成育学講座歯科矯正学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Application of Optical Impression in Presurgical Infant Orthopedics (Second Report)
  • —裂隙形態の影響—
  • —Effect of Cleft Form—

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抄録

我々は唇顎口蓋裂児の術前顎矯正に用いる口蓋床の作製にあたり,印象材を用いた印象採得による新生児や乳児の嘔吐や誤嚥のリスクを減少させるため,口腔内スキャナーを用いた光学印象を行っている。このような光学印象の効率化にあたり,第一報として患児の体動や口腔内の湿潤の影響を報告した。しかし,唇顎口蓋裂児の裂隙の形態や大きさには多様性が大きい。そこで,本研究では多様な裂隙の形態が,光学印象の撮像時間と精度に与える影響を検討した。<br>資料として,明海大学病院矯正歯科を受診した2例の片側性唇顎口蓋裂児から作製したエポキシ樹脂製口腔模型を用いた。2例の顎堤の最大長径は31.0〜32.0mm,最大幅径は45.0mmで,症例間に差はなかった。症例1は顎裂幅と口蓋裂幅が各々2.0mmと11.0mmの生後30日の右側唇顎口蓋裂児,症例2は顎裂幅と口蓋裂幅が各々11.5mmと18.0mmの生後20日の左側唇顎口蓋裂児であった。撮像時間は,症例1と比較して裂隙の大きな症例2では有意に長かった。また模型表面の湿潤や立体振盪が撮像時間に与える影響は,症例1と比較して症例2でより大きかった。このような撮像時間の延長は裂隙サイズの増大による撮像面積の増加が一因と考えられたが,三次元的に複雑な裂隙形態やアンダーカットの差も原因と考えられた。我々は前報で撮像時のランドマークとしてシリコーン印象材を顎裂部に填塞することで,撮像時間が減少することを報告した。そこで本研究では,表面形態の異なる2種類の印象材を用いて顎裂を填塞した。その結果,平滑な表面形態のものがより時間短縮に有効であった。またこのような印象材の填塞は撮像精度に影響を与えなかった。<br>以上より,唇顎口蓋裂児の裂隙サイズの増大に伴って光学印象の撮像時間は延長した。また撮影時に顎裂部の填塞に用いる印象材の表面形態を平滑にすることで,撮像精度に影響なく撮像時間を短縮させることが可能であった。

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