C型肝硬変患者に発症したガス産生性後腹膜膿瘍の1例

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抄録

[はじめに]<BR>  元来、肝硬変患者は低タンパク(低アルブミン)血症を合併し低栄養状態であることが多く、例えば腹水を伴う場合の細菌性特発性腹膜炎など様々な感染症を発症する。今回我々はC型肝硬変患者に発症し、治療に難渋したガス産生性後腹膜膿瘍の1例を経験したので、文献的考察を加えてここに報告する。<BR> [症  例]<BR> 症 例:72歳,女性<BR> 主 訴:発熱,腰痛<BR> 現病歴:以前よりC型肝硬変の診断にて当院内科外来通院中であった。本年3月下旬頃より腰痛が強くなり腰椎(L1)圧迫骨折の診断にて当院整形外科入院。入院後から38~39℃前後の発熱が続いたため、原因精査目的にて4/7内科転科となった。<BR> 入院時現症:身長151cm,体重36.5kg,体温38.8℃,脈拍124/分・整,血圧112/58mmHg,意識清明,眼瞼結膜に貧血・黄疸なし,心音,呼吸音は正常,神経学的所見に異常なし。<BR> 入院時検査所見:血液検査にてWBC 17800/mm3,CRP21.2mg/dlと著明な高値を呈し、プロカルシトニン陽性。尿検査は異常なし。<BR> [入院後経過]<BR>  CTにて圧迫骨折した腰椎(L1)内のガス像とその周囲に内部にガスを伴う膿瘍形成を認めた。ここが発熱の原発巣と考えられガス産生性後腹膜膿瘍を伴う化膿性脊椎炎と診断した。入院直後より抗生剤投与が施行されていたが反応は乏しく、内科転科後の血液培養にて黄色ブドウ球菌が検出された。敗血症として免疫グロブリン製剤を併用し、2回目の血液培養では陰性となったが、その後も発熱と激しい腰痛が続きNSAID投与にても軽快しないため、やむを得ずステロイドを抗生剤と併用したところようやく発熱及び腰痛コントロールが可能となった。しかしステロイドを中止するとすぐに上記症状は増悪し、画像上も膿瘍の縮小傾向は全く認められないため病巣のドレナージあるいは掻爬が必要と考えられ大学病院へ転院となった。<BR> [考 察]<BR>  化膿性脊椎炎は、早期には単なる腰痛症や圧迫骨折として診断されてしまうことが多く、治療が遅れると敗血症からDICなどに進展する重篤な感染症である。一般的には内科的治療の治癒率が高いと言われているが、早期に診断でき適切な抗生剤による治療が行われたとしても反応性に乏しく、病巣のドレナージや掻爬といった外科的な治療が必要となることがある。またガス産生性膿瘍の症例で肝膿瘍の報告は多いが、本症例のように後腹膜膿瘍や化膿性脊椎炎の報告は極めて稀である。<BR>  肝硬変患者が発熱を伴う腰痛を訴えた場合、尿路感染症以外に化膿性脊椎炎を念頭において早期にCT、MRIによる鑑別診断を行う必要があると考えられた。

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  • CRID
    1390282680495826944
  • NII論文ID
    130006945612
  • DOI
    10.14879/nnigss.59.0.83.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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