高齢健常者(70代男女)の嗅覚の状態とその特徴について

DOI
  • 関 一彦
    医療法人同心会 古賀総合病院 リハビリテーション技術部 九州保健福祉大学大学院 保健科学研究科
  • 濱田 正貴
    医療法人同心会 古賀総合病院 リハビリテーション技術部
  • 天神 里美
    医療法人同心会 古賀総合病院 リハビリテーション技術部
  • 東窪 幸代
    医療法人同心会 古賀総合病院 リハビリテーション技術部
  • 椎葉 隆
    医療法人同心会 古賀総合病院 リハビリテーション技術部
  • 山口 良美
    医療法人同心会 古賀総合病院 リハビリテーション技術部
  • 鶴田 和仁
    医療法人同心会 古賀総合病院 診療部
  • 福本 安甫
    九州保健福祉大学大学院 保健科学研究科

抄録

【はじめに】<br>高齢者の嗅覚障害は、すでに多くの先行研究によって指摘されている。そうした中、近年、脳波・MRI・PETなどの他覚的検査導入による嗅覚路やニオイの情報処理に関する研究は目覚しい進歩を遂げているが、個々のニオイに対する特徴や傾向を確認できるものは比較的少ない。今回、T&Tオルファクトメーターによる年代別嗅覚調査を行う中で、嗅覚低下が顕著とされる70代に注目、その結果から幾つかの特徴・傾向などを確認することができたため報告する。<br>【対象・方法】<br>対象は、70代男女26名(男性13名・女性13名)、平均年齢、男性73.6±2.7歳・女性74.4±3.2歳。調査器具には、T&Tオルファクトメーター(嗅覚測定用基準臭:第一薬品)を使用、A:β-フェニルエチルアルコール・B:メチルシクロペンテノロン・C:イソ吉草酸・D:γ‐ウンデカラクトン・E:スカトールの5種39サンプル、0.7cm×14cmの無臭の匂い紙、オルファクトグラムからなる。調査方法は、被検者の検知域値及び認知域値を調査するが、嗅覚の判定には実際の生活の状況をよりよく表す認知域値を採用する。なお、オルファクトグラムは、最も薄い濃度が-2となっており、スケールアウトは、B以外6、Bのみ5となる。<br>【結果】<br>検知域値の平均値は、男性0.1±1.8、女性-1.4±0.8、認知域値の平均値は、男性3.2±1.7、女性2.0±1.7となった。ちなみに、1.1から2.5は軽度の嗅覚障害、2.6から4.0は中等度の嗅覚障害と判断される。男女比較の結果、認知域値では有意差を確認できなかったが、検知域値では有意差(P<0.05)を確認した。さらに、それぞれの基準臭別にみた男女比較では、検知域値では基準臭B以外いずれも有意差(P<0.05)を確認し、認知域値では、基準臭AとCで有意差(P<0.05)を確認した。しかし、検知域値で有意差(P<0.05)を確認したスカトール(便臭など)が、認知域値ではほとんど男女差のない結果となった。<br>【考察】<br>嗅覚低下の始まりは、50代や60代など諸説あるが、急速な悪化は70代からとするのが一般的である。また、嗅覚は性差の顕著な感覚であり、女性は男性に比べ一般的に嗅覚感度が良いとされている。そこで今回は、調査中のデータから70代男女に注目し比較検討した。結果、女性群の場合、低下はあるものの嗅覚は比較的保たれていることが確認されたが、男性群の場合、中等度の嗅覚障害レベルにあり、急激な悪化の傾向を示す結果となった。一方、認知域値の平均で男女に有意差を認めなかったのは意外であったが、検知域値の平均や、個々の基準臭別では有意差(P<0.05)を認めるものが多く、先行研究などの結論を裏付ける結果であるとも言える。<br>【まとめ】<br>今回の調査結果から、高齢者の嗅覚低下の一端を確認することができた。今後は、40代から70代の年代別データを充実させ、年代別基準値作成のもと、嗅覚障害が指摘されているAlzheimer病やParkinson病などの嗅覚評価に生かして行きたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680601262080
  • NII論文ID
    130006984773
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2006.0.63.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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