頚部・両上肢に失調を呈した患者に対する作業療法の経験

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  • 食事動作能力向上を目指して

抄録

【はじめに】<BR> 今回、頚部・両上肢に著明な失調を認め食事動作に介助を要する患者を経験した。<BR> 作業療法を実施し失調の軽減、食事動作能力向上が認められた為ここに報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 60代男性、既往歴は精神発達遅滞。現病歴は、平成20年1月末より歩行困難、尿失禁認めた。同年2月末デイケア職員が訪問時に状態の変化に気付き当院受診。頭部CTで右慢性硬膜下血腫と診断。A病院搬送され血腫洗浄術施行。同年3月中旬リハビリテーション(以下リハ)目的にて当院再入院。翌日よりリハ開始となった。振戦に対し薬物療法が処方された。<BR>【作業療法評価】<BR>左上肢下肢手指StageV~VI。MMTは両上下肢Goodレベル、握力は右9.8kg、左8.0kg。簡易上肢機能検査は右4点、左2点であった。<BR>鼻指鼻テストで両上肢企図振戦を認めた。更に緊張等、心理的な影響により失調の増大を認めた。回内外テストで交互反復拮抗運動障害を認めた。線引き試験、打点検査は失調が強く鉛筆を持てず不可であった。また指示に従っての追視が困難であり、眼球運動障害を呈していた。<BR>HDS-Rは5/30点。ADLはBarthel Indexで40/100点であり食事動作全介助。その他に関しては監視から軽介助レベルで、歩行はふらつきあるも近位監視にて可能であった。<BR>【訓練内容】<BR>ボール把握・上肢フレンケル体操・ペグボード・食事動作訓練<BR>【経過及び結果】<BR> 動作時、失調の出現に対して過度に力を入れて運動軌跡を修正しようとする事で、更に強く失調が出現していた。その為、食事動作は全介助にて行っていた。<BR> 訓練としては、上腕近位部を緊縛帯で固定し、手関節・前腕部に重錘負荷を掛けた状態で、反復動作訓練を段階付けして実施した。その結果、動作の獲得が図れ、おにぎりの自己摂取が可能となった。<BR>【考察】<BR> 失調の訓練は、目的動作を分解して反復訓練を行い、各要素を統合する事が重要であると述べられている。<BR> 本患者は、食事動作において、掴む動作・口へ運ぶ動作・掬う動作が困難であった。<BR>そこで、掴む動作・口へ運ぶ動作に着目し、動作獲得の為に、ボール把持、フレンケル体操とペグボードを導入する事で動作の獲得が図れ、おにぎりの自己摂取が可能となった。<BR> これは視覚と運動を連動した反復動作訓練を実施した事で目的に即した運動の調節と制御が図れ、また重錘・緊縛鯛による固有感覚に対する刺激により適度な筋コントロールの向上へと繫がり、これが成熟したことで掴む動作と口へ運ぶ動作が可能となったのではないかと考える。<BR> 今回、反復動作訓練を行うことで掴む動作、口へ運ぶ動作が可能となったが、今後の課題としてより複雑である掬う動作に対しても反復動作訓練を行うことでスプーン操作の獲得を図っていきたい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205624789248
  • NII論文ID
    130006985011
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2008.0.22.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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