和歌山県におけるタイワンザルとニホンザルの交雑に関する遺伝学的研究

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  • Genetic study on the hybridization between Taiwanese and Japanese macaques in Wakayama Prefecture

抄録

目的:和歌山県大池周辺で野生化したタイワンザルと周辺のニホンザルとの交雑状況を遺伝標識を用いて解明すること。<BR>方法:2003年3月から7月に収集した68個体の血液試料について、種判別に有効な3種類の血液タンパク質(ADA、DIA、TF)の電気泳動変異、1種類の常染色体DNA(NRAMP1)、1種類のY染色体DNA(TSPY)およびmtDNAの塩基配列変異を検索した。個体ならびに集団の交雑度を判定し、移入タイワンザルの交雑にみられる遺伝的特性を検討した。<BR>結果:ADAとDIAでは2種類の対立遺伝子、TFでは4種類の対立遺伝子を認めた。ニホンザルとの比較により、タイワンザルの特異遺伝子が判定できた。NRAMP1には3種類の対立遺伝子があり、タイワンザル移入群がDNA多型を示すことが明らかになった。TSPYとmtDNAでは種特徴的ハプロタイプがひとつづつ検出できた。常染色体性遺伝子座にもとづく個体の交雑度判定の結果、1代目の交雑個体が14.7%、2代以上の交雑個体が70.6%に達していること、集団全体では遺伝子の52.2%がニホンザル遺伝子に置き換わっていることが明らかになった。また、TSPYやmtDNAの結果も加え移入や出生地を検討した結果、4.4%が外部から移入したニホンザルのオスと判定できた。なお、メスのニホンザルの加入は認められなかった。<BR>考察:mtDNAタイプから移入種群生まれと判定された65個体について、両性遺伝標識の遺伝子型分布を検定した。この結果、任意交配の帰無仮説がすべての座位で支持され、交雑群内で配偶者選択に関する生殖的隔離の兆候は認められなかった。野生化したタイワンザル群内ではニホンザルの移入オスとタイワンザルが非選択的に繁殖し継代したことにより、約50年間で外来種の遺伝子を半減させるほど群れの遺伝子構成が急速に変化したと考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680610735104
  • NII論文ID
    130006996203
  • DOI
    10.14907/primate.20.0.101.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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