金華山の野生ニホンザルにおける複数個体によるワカモノオス一個体への一方的攻撃とその死

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タイトル別名
  • A case study of a one-sided attack by multiple troop members on a non-troop adolescent male and the death in Kinkazan monkeys

抄録

金華山A群を追随していたピアスと名付けられたワカモノオス(推定7歳)一頭が,複数の群れのメンバーによって一方的に攻撃され,その攻撃的交渉の終了までがビデオにより記録された。<br> 少なくとも16頭のメンバーがピアスに一回以上接近したが,そのうち攻撃したのは群れのオトナオス1頭と群れのワカモノオス2頭だけだった。ピアスは攻撃にさらされる間中うずくまりの姿勢を維持し,一度逃げ出し,その結果,荒れた海に飛び込んだ。交渉は1時間以上におよび,その数時間後ピアスは死亡した。オスたちが攻撃によってピアスに与えたダメージは小さく,ピアスの直接の死因は海での漂流による低体温によるものと推定された。<br> ピアスはB1群のまわりのオスグループに2年ほど所属したのち交尾期後にA群に追随を始めた,ごく普通のワカモノオスと考えられた。攻撃的交渉は,群れのオスと群れ外のオスとの間の競合の一例と考えられる。<br> これまで報告されたニホンザル同士の競合と比べてその持続時間は長かった。これは群れの潜在資源を巡る競合相手となりうるピアスが,開けた場所でうずくまり続けたために,群れのメンバーたちの視界から逃れることができず,また攻撃者に対して劣位や和解を示さなかったために,オスたちは攻撃をやめなかったためと考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680611973120
  • NII論文ID
    130006997774
  • DOI
    10.14907/primate.25.0.36.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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