遺伝子破壊による糖鎖機能の解明!)プロテオーム解析の活用にむけて

DOI
  • 野村 一也
    九大・理院・生物科学 科学技術振興機構 (CREST)

書誌事項

タイトル別名
  • Functional glycoproteomics in the nematode C. elegans

抄録

私達は線虫C. elegansの「糖鎖と糖鎖に関連した遺伝子」の遺伝子機能を、RNAi(RNA干渉法)や遺伝子ノックアウトで破壊して何が起こるかを調べることで、糖鎖の多細胞生物での役割を戦略的に解析しようと試みている。今回は、糖鎖関連遺伝子の機能破壊による代表的な表現型を紹介し、その表現型がどんなプロテオームの変化を伴うかを解析して糖鎖関連遺伝子の機能を明らかにする試みを紹介する。線虫は大量培養によってプロテオーム解析が可能な数少ないモデル生物であり、均一な遺伝子背景のもとで、遺伝子変異でどんなプロテオームの変動がもたらされ、表現型にむすびついていくかを理解するためには絶好の生物と考えられる。 <BR><BR>線虫は遺伝学と逆遺伝学的手法が駆使できる優れたモデル生物である。また発生するスピードが早く、2-3日で受精卵から成体になるので進化の研究にも使われるほどである。さらに凍結保存ができるので、様々な変異株を小さな研究室でも大量に保存して戦略的に解析できる。ハイスループットでの遺伝子解析ができる唯一の生物といわれるゆえんである。成虫は約1,000個の体細胞からできており、神経細胞は約300個しかない。全神経ネットワークも解明済みで、全細胞の細胞系譜も判明している。ゲノムDNA配列は完全に解明されており、RNAiによる遺伝子機能阻害も容易である。そして遺伝子ノックアウトも週20遺伝子程度のスピードで行うことが可能であり、遺伝子機能の解析に最適の生物といえる。<BR><BR>私達は突然変異体やRNAi処理した線虫と野性株であるN2株のプロテオームを2D-DIGE法を含めた二次元電気泳動で比較し、変動しているスポットを質量分析法でシークエンスして同定している。同定結果をもとにさらにRNAiや欠失突然変異株を取得して解析をすすめ、糖鎖とそれに関連する遺伝子がどの様な遺伝子ネットワークをなしているかを明らかにしたいと考えている。<BR><BR>文献:<BR>「糖鎖の機能を線虫C. elegansの神経系で探る」 <BR>  蛋白質 核酸 酵素 (2004)49, 2327-2335.(増刊:神経糖鎖生物学)<BR>野村一也、出嶋克史、野村和子、水口惣平 <BR><BR>「線虫の細胞分裂を制御する糖鎖コンドロイチン」 <BR>  蛋白質 核酸 酵素 (2004)、49、141-147.<BR>水口惣平、野村和子、出嶋克史、安藤恵子、三谷昌平、宇山徹、北川裕之、菅原一幸、野村一也

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680612969728
  • NII論文ID
    130006998919
  • DOI
    10.14889/jhupo.2005.0.31.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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