被ばく影響としての遺伝子損傷とオートファージについて

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  • Radiation induced DNA damage response and autophage

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抄録

目的:長崎原爆被爆者の体内残留放射能を検出し、放射線が人体に及ぼす内部被曝の影響を病理学的に検討する。その一環として、オートラジオグラフィー法によりアルファ粒子飛跡を確認し内部被曝の検出法を確立した。一方、我々は放射線発がんについてゲノム不安定性に関わる分子病理学的側面から、原爆被爆症例ではがん抑制遺伝子p53関連蛋白でDNA二重鎖切断部位に集積して核内フォーカスを形成する53BP1が高発現していることを報告した。また、1)肝臓内トロトラスト沈着内部被曝による53BP1の高発現、2)原爆急性被爆者で、近距離被爆者の肝53BP1の高発現も認めている。さて、放射線による細胞死については典型的なアポトーシスがあるが、肝臓、腎臓、肺では一般的に感受性は低いと考えられている。近年、カスパーセに依存しない細胞死の一群があることが明らかになり、細胞質中にオートファージ様の現象が見られることから、分解系であるオートファージが細胞死にも関与している可能性が考えられている。今回、放射線障害とオートファージについて、さらに、放射線によるゲノム不安定性について検討した。 試料と方法:1)4および8週齢ラットにX線を8Gy全身照射し3,6,24時間後に肝臓、腎臓、肺、2)内部被爆例としてトロトラスト症肝、について、53BP1、オートファゴゾーム膜に局在するLC3の蛍光免疫法,電顕を施行した。結果:1)特に、ラット肝について53BP1フォーカス形成の増加が認められ、LC3発現、電顕によるオートファージ像が確認された。2)トロトラスト症肝標本では特にトロトラスト顆粒周辺の細胞に53BP1のフォーカス形成が認められ、LC3の発現も観察された。以上から、放射線障害にオートファージ機構が関与すると考えられた。

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