新規in vitroリン脂質症スクリーニング系の構築
書誌事項
- タイトル別名
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- A Novel in vitro Screening System for Detecting Drug-Induced Phospholipidosis
抄録
【背景】薬物誘発性リン脂質症(PLS)は全身の諸臓器にリン脂質が異常蓄積することを特徴とし,薬物の開発において問題となる毒性所見である。最近,開発の初期段階でリン脂質症発症のポテンシャルを見極めるための方法として,蛍光プローブを用いた方法やトキシコゲノミクスを利用したin vitroアッセイ系が報告されている。今回,我々はリソソーム酵素の輸送阻害に基づく新規in vitroリン脂質症スクリーニング系を構築したので報告する。 【方法・結果】PLS誘発化合物であるアミオダロン(AD)を正常ラット腎臓由来細胞株(NRK細胞)に24時間暴露し,その後種々のオルガネラマーカータンパク質の抗体を用いて免疫蛍光顕微鏡観察を実施した。その結果,AD暴露後のNRK細胞では後期エンドソームとリソソームが肥大し,更にリソソーム酵素をリソソームに運搬する役割を担っているマンノース6-リン酸受容体(MPR)の局在がその機能部位であるトランスゴルジネットワーク(TGN)から後期エンドソームに変化していることが判明した。このようなMPRの局在変化は,リソソーム酵素が正常にリソソームに輸送されず,細胞外(培地中)に分泌されることを予想させた。そこで,ADを24時間暴露したNRK細胞の細胞内及び培地中のリソソーム酵素(β-hexosaminidase:β-hex)活性を測定した。その結果,ADの濃度依存的に細胞内のβ-hex活性が減少し,培地中のβ-hex活性は増加した。更に,種々のPLS誘発化合物についても検討を行った結果,ほとんどのPLS誘発化合物で,ADと同様のMPR局在変化及びβ-hexの分泌増加が引き起こされた。以上の結果は,MPRの局在変化とそれに伴うリソソーム酵素輸送阻害がリン脂質症発症の一因である可能性を示唆する。我々は,薬物暴露細胞の培地中のリソソーム酵素活性を測定するという簡便な方法による,新薬開発時のリン脂質症誘発の初期判断に極めて有効な新規スクリーニング系を確立した。
収録刊行物
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- 日本トキシコロジー学会学術年会
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日本トキシコロジー学会学術年会 35 (0), 279-279, 2008
日本毒性学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680634611456
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- NII論文ID
- 130007003102
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可