海産有毒プランクトンに寄生するツボカビについて
書誌事項
- タイトル別名
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- Parasitic chytrid on toxic marine phytoplankton
抄録
ツボカビは,古くから湖沼など淡水域における植物プランクトンの個体群動態に大きな影響を及ぼす生物要因として注目され,近年では植物プランクトンとの相互関係(共進化)や食物網の中で果たす生態学的役割についても研究が進められている.しかし,海産植物プランクトンに寄生するツボカビに関する知見は極めて乏しいのが現状である.演者らは,麻痺性貝毒(PSP)の原因種である海産渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseが生活史の一時期に形成するシスト(休眠細胞)から発芽した細胞に寄生するツボカビを発見したので,本講演ではその形態学的特徴と発達過程について報告する.<BR>愛知県三河湾から採取した海底堆積物から泥懸濁液を調製し,シストの発芽に好適な条件(12.5℃,明暗周期12hL:12hD)下で培養した.培養開始後,遊走子と思われる粒子が付着した発芽細胞を分離・培養し,その形態と発達過程を光学および電子顕微鏡(SEM,TEM)を用いて観察した.<BR>A. tamarense発芽細胞に付着した遊走子は数日のうちに成長し,内部に小型顆粒が多数認められるようになった.さらに成長が進むと,菌体内部に遊走子が充満し,遊走子嚢となった.遊走子嚢は径約20µmの球状で,蓋状の構造はみられなかった.その後,遊走子は遊走子嚢内で運動し始め,最終的には外部に放出された.遊走子は頭部が約2 µmの球形で,後端に長さ約16 µmのムチ型鞭毛1本を有した.TEM観察の結果,遊走子は脂質粒子を1個持ち,ミクロボディ-脂質小球粒複合体(MLC)と1個のミトコンドリアならびにリボソームが細胞中央にまとまって位置するが,核はそれとは一線を画するといった特徴を示した.これらの菌体および遊走子の形態学的特性から,本菌はツボカビ目(Chytridiales)の一種と考えられた.また,菌体の発達過程を経時的に調べた結果,本菌の生活環はほぼ2日間で完結することが明らかとなった.今後,海洋生態系における寄生性ツボカビの役割を解明するため,本菌の分類,生理・生態に関する研究をさらに進める必要があると思われる.
収録刊行物
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- 日本菌学会大会講演要旨集
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日本菌学会大会講演要旨集 55 (0), 39-39, 2011
日本菌学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680638078080
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- NII論文ID
- 130007004840
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可