クリタケ野生株間の遺伝的関係

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Genetic relationships among wild strains of <I> Naematoloma sublateritium</I>

抄録

日本各地から採取した野生クリタケ32菌株(北海道産2,青森県産1,岩手県産2,秋田県産1,山形県産2,福島県産1,山梨県産1,長野県産17,岐阜県産1,福井県産1,京都府産1,鳥取県産2)を供試し,それらの間の遺伝的類縁関係を検討するために,対峙培養試験およびAFLP分析を行った。また,クリタケのmtDNA多型に関する知見を得るために,数菌株から単離したmtDNAについてRFLP分析を行った。<BR> 供試菌株を総当りの組合せでGM寒天培地を用いて対峙培養した結果,組合せにより菌糸体接触部の反応(帯線の幅,着色の程度など)は大きく異なり,この反応の強さから各菌株間の遺伝的差異の程度をおおまかに推定することができた。AFLP分析の二次増幅プライマーには3組のプライマーペアを用いたが,単一のプライマーペアを用いて検出したAFLPパターンによって供試32菌株全てを互いに識別することができた。3組のプライマーペアで検出された合計228本のAFLPバンドの有無を基準にして各菌株間で遺伝的距離(1 - 共通バンド数/全バンド数)を算出した。遺伝的距離の値は,0.1833(最小)- 0.6559(最大)と全体的に高い値を示し,供試した個々の野生株間の遺伝的差異が比較的大きいことが示された。また,遺伝的距離データを基に作成したUPGMA系統樹において,各菌株間の遺伝的類縁関係と地理的分布の間には有意な関係は認められなかった。単離したmtDNAのRFLPパターン(EcoRIおよびEcoRV)は菌株間で大きく異なった。多型バンドも多く認められたことから,クリタケのmtDNAの変異性は高いことが示唆された。以上の結果を総合すると,日本のクリタケ自然集団内には核DNAとmtDNAの両方において変異に富んだ野生株が存在していると考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205662328448
  • NII論文ID
    130007005065
  • DOI
    10.11556/msj7abst.50.0.114.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ