アイナメ属3種の繁殖場所選択と交雑との関係
書誌事項
- タイトル別名
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- Distribution of breeding territories and spawning substrates of three Japanese greenlings, and interspecific breeding on tetrapots
抄録
北海道南部は、温帯性のクジメHexagrammos agrammusとアイナメH. otakii、および亜寒帯性種のスジアイナメH. octogrammusが同所的に生息する世界でも珍しい海域である。クジメとスジアイナメはともに浅場の藻場で繁殖するため、両種の分布が重なる海域ではしばしば雑種が報告されてきた。これに対してアイナメはクジメやスジアイナメよりも深場に生息するため、繁殖場所が隔離し交雑は回避されていると考えられてきた。しかし近年、北海道南部太平洋岸の臼尻沿岸でアイナメと他の2種との交雑が確認された。このことはこれまでアイナメと他の2種との間で働いていると考えられていた繁殖場所の違いによる交配前隔離機構が、この海域では十分に機能していないことを示している。そこで本研究では、同所的生息海域におけるアイナメ属3種の繁殖場所の分布に関する基礎的知見を得ることを目的として、臼尻沿岸における3種の繁殖場所の分布と産卵基質を調査した。<br> その結果、クジメとスジアイナメは丈が長く葉状部が枝状を呈し岩上に密生する小型藻類を、アイナメは丈が短く凹凸があり平面的に広がるコケムシ類や網などを産卵基質として利用していた。すなわちアイナメは他の2種と産卵基質の選好性が異なることが明らかとなった。3種のなわばり形成場所は産卵基質の分布に対応しており、クジメやスジアイナメは小型藻類が繁茂する浅場の岩棚部分で、アイナメはコケムシ類の付着する深場の魚礁のほか、漁港外縁にある消波ブロック帯の海底に沈む根固め用の石を入れた網袋の結び目などで見られた。また消波ブロック帯は急峻な斜面を形成するため上部には小型藻類が繁茂し、クジメやスジアイナメのなわばりも見られた。このように消波ブロック帯の複雑な地形が性質の異なる産卵基質が混在する環境を作り出し、アイナメ属の交配前隔離機構を撹乱している可能性が示唆された。<br>
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 211-211, 2004
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680666659200
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- NII論文ID
- 130007011129
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可