上野動物園における来園者の移動パターンとその地理的性格

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  • Mobility patterns and their geographical characteristics of visitors in Ueno Zoological Garden, Tokyo

抄録

<BR>1. はじめに<BR>  地理学の観光研究において、ある一定の場所または空間内における観光客の移動パターンについて考察したものは少ない(ピアス 2001:174-180)。本研究は、アンケートとGPS端末を利用した調査を行い、ミクロな観光行動の性質について考察したものである。なお、今回は、ミクロな観光行動の中でも、特に移動パターンについて発表する。<BR> <BR> 2. 動物園の分類<BR>  本研究では、調査の利便性、協力の有無などから都市観光の1施設である動物園を研究対象とした。動物園は、その経営体と開園時期、および立地や歴史性などから、大きく都市型動物園と郊外型動物園に分類することができる。本発表は、都市型動物園の事例である恩賜上野動物園(以下上野動物園)における調査とその結果を発表する。なお、有馬(2007)において、郊外型動物園の事例である多摩動物公園における調査結果をすでに発表している。<BR> <BR> 3. 調査方法<BR>  本研究において行った調査は、上野動物園において無作為に抽出した来園者に対して行ったアンケート調査とGPS端末を利用した調査である(第1表)。GPSのデータは使用できるデータのみ利用し、補正を行った上で、GISによって解析した(第1図)。<BR> <BR> 4. 上野動物園の事例<BR>  調査の結果、上野動物園においては、多摩動物公園に比べ、移動パターンが複雑であった。その要因は、狭い敷地に各動物展示が密集していることによるところが大きい。<BR>  また、多摩動物公園においては確認された、最も見たい動物展示の位置が、移動パターンに影響するという現象はみられなかった。これは先述した敷地や動物展示の配置の側面に加え、上野動物園の来園者に初回の来園者が多いため、園内の空間認識が乏しいという来園者の側面によるものといえる。<BR>  多摩動物公園に比べ、上野動物園における敷地の傾斜はあまりない。しかし、来園者の移動パターンを考察すると、多摩動物公園の来園者よりも、上野動物園の来園者のほうが、地形や敷地の形状に大きく影響された移動パターンをとっていた。<BR>  また、上野動物園においては、動物園本来のアトラクションである動物展示には左右されない移動ルートが存在していた。このことから、上野動物園は、動物園本来の役割である動物観覧以外の目的でも、人々に利用されているといえる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680668413824
  • NII論文ID
    130007013824
  • DOI
    10.14866/ajg.2008s.0.4.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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