若者のレクリエーション行動からみた偕楽園という観光資源

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タイトル別名
  • "Kairakuen" as Tourism Resources: the Perspective of Recreational Behaviors in Young Generations

抄録

<I> _I_ はじめに </I> <BR>  都市公園は、都市観光やレクリエーションにおいて極めて重要な存在である。また、都市公園には歴史性のある公園も多く、そのような都市公園にはある特定のイメージや意味付けがなされている。歴史性のある都市公園は、一般的に高齢者に利用されることが多いが、そもそも公園とは老若男女を問わず、さまざまな人に利用されるべきものである。そこで、本研究では、あえて主要な利用者ではない若者という視点から、都市公園の役割について議論していく。具体的には、公園内における若者のレクリエーション行動を考察することで、上記の課題に答えていく。 <BR> <BR> <I> _II_ 現代社会における偕楽園 </I> <BR>  本研究では、都市公園の事例として、茨城県水戸市にある偕楽園を事例とした。偕楽園は、水戸藩第九代藩主である徳川斉昭の命によって1842年に造園された。現在、日本三大名園の一つに数えられている。園内には3000本あまりの梅の木があり、2月から3月に開催される「梅まつり」は、非日常空間としての偕楽園における観光行事の目玉となっている。これは一般書店で扱われているガイドブックの茨城版にはもちろん、季節が近づくと地域のフリーペーパーなどにも取り上げられていた。しかしながら偕楽園に関する記述の多くが季節性の高い「梅まつり」や、園内のその他の植物についてであり、若者の興味を引くような、あるいは若者が対象となり得る催し物や特色はほとんど見られなかった。 <BR> <BR> <I> _III_ 偕楽園における若者のレクリエーション行動 </I> <BR>  本研究における行動調査の被験者は茨城大学、および茨城大学大学院の学生、延べ21人(21~25歳)である。調査は、偕楽園東門をスタート地点とし、被験者にビデオカメラを渡し、気になったもの、面白いと思ったものを撮影してもらいながら園内を歩いてもらうという形式をとった。時間の制限は設けずに、スタート地点に戻ってきた時点で、調査終了とした。そして、各被験者が撮影したビデオカメラの内容を分析した。特に本研究では、移動ルート、被験者の視線、発話のそれぞれについて分析と考察を行った。 まず、被験者の移動ルートを分析した結果、季節の違い(春・秋)によって、園内の回り方に差があることが明らかとなった(図)。春に行った調査では、被験者は、先に梅林の方向へ向かう傾向があるのに対し、秋に行った調査では、先に見晴し広場の方向へ向かう傾向があった。このことは季節によって、若者が持つ偕楽園の最も魅力的な資源が異なることを示唆しているといえる。 次に、被験者の視線について分析したところ、その視線も、季節によって若干の相違がみられた。しかし、若者の視線は、一般に認識されている梅や好文亭などの偕楽園の資源に対してではなく、偕楽園を訪れる他の来園者に対して向けられる傾向がある。つまり、若者にとっての偕楽園の資源とは、歴史性や植物というよりも、それらの偕楽園の資源を利用する人々であると考えられる。 また、被験者が行った会話の内容についての分析結果では、季節性にあまり左右されない原則が認められた。園内における若者の会話には、偕楽園の資源についての会話を発端として、すぐの後にそれらとは全く関係のない会話へと移行する過程が顕著に見受けられた。つまり、若者にとっての偕楽園は、お互いのコミュニケーションを行う場として機能しているといえる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692591104
  • NII論文ID
    130007015110
  • DOI
    10.14866/ajg.2008f.0.68.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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