地理学系の学部・学科における地図・図書資料の活用

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タイトル別名
  • Application of Maps and Documents in Geographical School
  • Case Study of the Map Library in Rissho University
  • 立正大学地球環境科学部地図室の事例

抄録

1.はじめに 地理学系の学部・学科では膨大な量の地図や史資料を所蔵している.地理学教育の現場では,野外巡検の準備,レポート作成や卒業論文の執筆などで学生がこれらの資料を利用する機会は多い.しかしながら,学部学生が資料室(あるいは図書館)をどの程度認識し,活用しているのかという点について利用実態も含め,教職員はほとんど把握していないと言える.利用実態を把握することは資料室の活用や資料の整理方法,および学部学生に対する資料検索の指導を考える上で非常に重要である.本発表では,立正大学地球環境科学部における資料室の利用実態を報告する.なお,本学における地図整理は文部科学省オープンリサーチセンター事業の一環として実施した.2.アンケート調査 立正大学の地理学教室では地図室と呼ばれる資料室に地図や史資料を収蔵している.本研究では,地図室の認知や利用を中心とした質問項目のアンケート調査を実施した.調査は,立正大学地理学科の全学生を対象としたアンケートと地図室を訪れた学生を対象としたアンケートの2種類を実施した.前者の回答数は1年生から4年生で,それぞれ135,115,129,143であった.後者のアンケートは2005年4月13日から4月28日までの14日間(日曜日を除く)の地図室利用者を対象とし,回答数は104であった.3.調査結果 地理学科全学生で地図室の認知度を見ると,地図室を知っていると答えた学生は4年生(72.0%),3年生(71.3%),2年生(64.3%),1年生(2.2%)の順で多かった.次に,地図室を知ったきっかけについては,全学年で授業(55.1%),教員(15.0%),友人(11.3%),学科ガイダンス(10%),先輩(4%),パンフレット(3.7%),ホームページ(1%)の順となった.学年が上がるとともに地図室の認知度も高くなる傾向が認めらた.しかし,学年とともに認知度が高くなるのは3年生までで,4年生の認知度は3年生とほぼ同じであった.地図室を認知している学生のうち,地図室を利用したことがある学生の割合は,4年生(80%),3年生(76.7%),2年生(24.3%)で,4月に調査を実施したこともあり1年生に利用者はいなかった.利用率も認知度と同様に学年とともに高くなり,3年生と4年生の利用率はほぼ同じであった.地図室以外での資料の入手先は,全学年でインターネット(26.6_%_),大学図書館(24.0%),自己購入(18.8%),学部図書資料室(16.2%),公共図書館(10.4%),他大学図書館(1.9%),文献を入手したことがない(1.9%)であった.大学図書館と学部図書資料室を合わせると40.2%となり,多くの学生が同じ大学内の別の資料室を使っていることが分かった.また,コンピュータ環境の普及によりインターネットを用いて資料収集する傾向が進んでいる.調査期間内に地図室を利用した学生の内訳は2年生(62.5%),3年生(18.8%),4年生(18.8%)であった.なお,1年生に利用者はいなかった.同期間内における地図室の利用目的は文献(53.4%),地図(40.8%),空中写真(1%),その他(4.9%)であった.地図よりも文献を探す学生の利用者が多い結果となった.空中写真の利用者は非常に少なかった.4.考察 立正大学地理学科では2年生,3年生に半期のゼミ形式の授業があり,この授業に関連して地図室を利用するケースが多い.授業で地図室を利用した学生が卒業論文執筆時に再び利用するために,4年生でも地図室の認知度や利用率が3年生とほぼ同じなったと考えられる.すなわち,3年生までの授業で地図室を利用しなかった学生は4年生でも利用しない傾向があると言える.地図室を利用しない学生の資料入手先は,学内の他の資料室やインターネットが主であった.これは地図室に収蔵されている資料が地理学およびその周辺領域の学問分野に特化しているためと考えられる.また,比較的容易に資料を得ることが出来るインターネットを学生が好むことも影響している.地図室の利用目的では地図と文献を合わせて94.2%となった.この結果から,地図や文献が活用される一方で,空中写真の利用者が少ないことが分かる. 今後の課題として,地図室を活用していない学生への利用法の周知や空中写真の利用を促進することが挙げられる.このために,アンケート結果を基に学生向けの地図室利用ガイドブックを作成したい.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670215552
  • NII論文ID
    130007016476
  • DOI
    10.14866/ajg.2005f.0.101.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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