いわき市川前町高部地区における学生主体による地域活性化の取組とその効果

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  • Possibility of Regional Development by Undergraduates in Takabe Area, Iwaki City, Fukushima Pref.

抄録

1.はじめに  本報告では、いわゆる限界集落の状況に近い集落に、学生という「異文化」が入り込み、地域活性化の取組をすることの効果を明らかにするものである。住民と学生の変化や、取組の効果について分析を進めた。対象として、2009年夏から地域活性化に取組んだ、いわき市川前町高部地区と熊谷地理研究会の学生との活動を取り上げる。 2.対象地域の概要  対象地域のいわき市川前町高部地区は、いわき市中心部の平地区から西へ向かって車で約1時間ほどの阿武隈山地内鹿又川の谷間に位置する。高部地区を含む旧川前村は、1966年の14市町村合併によりいわき市の一部となった。その後、少子高齢化、過疎化が急速に進んだ地域となっている。  2009年現在、高部地区には20世帯47人が暮らしている。この地区には30歳以下はおらず、55歳以上が人口の約77_%_と、集落機能を維持するぎりぎりの状態にある地区といえる。  かつては林業を中心とする第1次産業が主力であった。現在は、稲作や自家用の野菜などがおこなわれている。また、平や隣接する小野町などへ通勤する世帯がある他は、高齢者が中心である。 3.活動の経緯  高部地区と学生との出会いは、福島県の平成21年度「大学生の力を活用した集落活性化調査委託事業」がきっかけである。県内各地に過疎化した集落がある福島県が、県内を中心とする大学生に、集落活性化のアイデアを求めた事業である。  2009年8月上旬に2泊3日で全戸への聞き取り調査、ワークショップを実施、地域資源を洗い出すとともに「いいところマップ」の作成、「こころの活性化」をキーワードとした活性化策をまとめた。  この調査がきっかけとなり、県の事業を超えた交流がはじまった。地区のお祭りへの参加や、県の事業発表会(会津若松で開催)への住民の参加、地区での報告会の開催など、学生・住民双方から自発的に交流の輪が広がっていった。この成果により高部地区での取組は、翌2010年度の同事業「実証実験」へとつながることとなった。  2年目となる10年度は、見いだされた地域資源の活用を目標に、稲作体験(田植え・草取り・収穫)、盆踊りの復活、収穫した米の大学祭での販売、忘年会等をおこなった。また、住民との話し合いの機会を複数持ち、意思の疎通を図るとともに交流を深めていった。 4.学生と住民の変化  当初は、「これからずっとつきあっていかなければいけないのか」と不安がっていた学生だが、交流を通じ「自分たちができることには積極的にかかわっていきたい」というように変化した。また、住民も「学生に何ができるのか」といった様子を見ていた人々が、「地元の良さを再発見した」と喜ぶようになった。加えて「来年はあれをやろう…」というようにこの取組に主体的に関わろうとする姿勢が見られるようになった。  学生・住民、双方にとって「異文化」との交流は、両者にとって大きな刺激となっているようである。教育的効果とともに、沈滞ムード漂う過疎地域住民の意識変化という効果が表れたといえる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671152896
  • NII論文ID
    130007017396
  • DOI
    10.14866/ajg.2011s.0.94.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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