物理探査法とX線CTスキャンによる永久凍土構造の高解像度イメージング

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  • Imaging permafrost structures with geophysical methods and X-ray CT scan

抄録

1. はじめに<br><br> 永久凍土浅部は,析出氷,間隙氷,貫入氷など様々な形態の地中氷が形成され,含氷率が非常に高いことが知られている.永久凍土浅部の凍結構造を明らかにすることは,周氷河プロセスの解明や古環境の復元,永久凍土融解による地形や物質循環の変化を予測していく上で重要である.近年における技術の進歩により,永久凍土構造を高解像度で可視化することが可能となってきている.本発表では,北極圏スピッツベルゲン島中央部の連続永久凍土帯観測サイトにて実施した三次元地中レーダー探査,二次元比抵抗モニタリング,および採取した永久凍土コアのX線CTスキャンの結果を紹介する.<br><br> 2.調査地の概要<br><br> 調査地に選定した沖積扇状地末端部の平坦面には,約700 m四方の範囲内にマッドボイル(MB:<br>Mudboil),中型多角形土の中心部にマッドボイルを伴う複合型構造土(CP:<br>Composite pattern),アイスウェッジポリゴン(IW: Ice-wedge polygon)といった不淘汰構造土が分布しており,それぞれに観測サイトを設けた.多様な構造土の分布は,表層土の粒径分布や土壌水分,冬季地温条件の違いによって制約されている.<br><br> 3. 結果<br><br>(1)     三次元地中レーダー探査<br><br> 2010年5月初旬の全層凍結期に探査を実施した.MBサイトでは,季節融解層に斑点状の振幅異常が多数みられた.これらはマッドボイル部分に成長した析出氷を反映したものと解釈できる.一方,IWサイトでは,永久凍土層中にアイスウェッジの分布を示す線状の振幅異常が多角形模様で認められ,幅20 cm程度の細いアイスウェッジも明瞭に捉えることができた.<br><br>(2)     電気比抵抗トモグラフィ<br><br> 2009年および2010年の融解期に,10日前後の間隔で測定を繰り返し行った.融解層の比抵抗値は,融解期を通してIW,MB,CPサイトの順に高くなる結果となり,比抵抗値が低いほど土壌水分が多いことを反映している.一方,凍結層の比抵抗値と地温の関係を求めてみると,−1~0℃ではCP,MB,IWサイトの順に比抵抗値が高くなり,融解層とは逆の傾向となった.粘土分の多いCPサイトでは,融点付近で不凍水量が多くなるため比抵抗値が低くなるものと考えられる.だが,−1℃以下ではCPサイトの比抵抗値が急激に上昇する傾向があり,他サイトよりも氷に富んだ凍結構造であることが推察される.<br><br>(3)     X線CTスキャン<br><br> 2015年8月にCP,IWサイトで永久凍土コアを採取し,X線CTスキャンを行った.CPサイトのコアでは析出氷の存在が高い割合を占めた一方,IWサイトのコアは氷の割合が少なく,析出氷も微細なものに限られた.凍結構造の違いは,比抵抗値の違いから推察されるものと整合的な結果となった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672137600
  • NII論文ID
    130007017889
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100198
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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