ウシ卵子の体外成熟中における透明帯性状の変化

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Changes in the properties of the zona pellucida during bovine oocyte maturation

抄録

【目的】精子と卵子の相互作用には、透明帯構造またはこれに付加されている糖鎖が関わっていると考えられている。これらは卵子の発育過程を通して卵子自身または卵丘細胞より分泌・形成されるが、体外成熟中に起きる詳しい動態は不明である。そこで本実験では、ウシ卵子の体外成熟中の透明帯の変化と精子との相互作用の関係性について検討した。 【方法】ウシ卵子の体外成熟中の透明帯変化は、以下の項目について検討した。1)透明帯の精子との相互作用能力の変化、2)この相互作用能力の変化は、卵子または卵丘細胞どちらに起因するのか、3)この変化は透明帯タンパクの遺伝子発現と関係しているか、また4) この変化は、どのような糖鎖修飾によるものか。1)の透明帯の精子の相互作用は以下の3項目で評価した。[1]精子接着性を、精子と透明帯の5分間の共培養後の透明帯接着精子数、[2]精子結合性を5時間の共培養後の透明帯結合精子数、[3]透明帯接着・結合による精子先体反応誘起率。 【結果】透明帯は体外成熟中に精子接着性と先体反応誘起率が増加し、精子結合性は減少する事が観察された。卵丘細胞を除去し裸化卵子の状態で成熟培養を行った場合、この相互作用の変化は著しく減少した。しかし、透明帯タンパク ZP2、ZP3、ZP4 の遺伝子発現量をリアルタイム-RT-PCR法により確認したところ、卵丘細胞からの発現は微量であった。4)N-acetyl-D-glucosamine(GlcNAc)、fucose、mannose特異的レクチン染色により、透明帯の糖鎖修飾を裸化卵子と卵丘細胞卵子複合体で比較したところ、GlcNAcのみ染色に差が観察された。またN型またはO型糖鎖形成阻害剤を成熟培地に添加した場合、N型阻害剤添加においてのみ、成熟培養による接着性の増加が抑制された。また共培養培地へのGlcNAc添加は精子接着を抑制したが、N型糖鎖阻害条件下ではこの効果は認められなくなった。これらより、卵子の体外成熟中に起きる精子と透明帯の相互作用の変化は、卵丘細胞が関わるN型糖鎖修飾上のGlcNAcの変化が関与していること事が示された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205715956224
  • NII論文ID
    130007024329
  • DOI
    10.14882/jrds.104.0.1065.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ