GSK3がマウスES細胞のヘテロクロマチン構造に与える影響

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  • Contribution of GSK3s to maintain heterochromatin organization in mouse ES cells

抄録

GSK3 (glycogen synthase kinase 3) はセリン/スレオニンリン酸化酵素で、インスリンやIGF等の様々なシグナル経路の中心酵素である。マウスでは、2つのアイソフォーム(GSK3a,b)が存在し、Gsk3ダブルノックアウトにより、ES細胞からのEB (embryoid body) 形成能が失われることが報告されている。遺伝子の少ない領域や転写が不活性な領域に存在するゲノム凝集状態を反映した動的な構造であるヘテロクロマチンの構築はES細胞の分化過程において変化することが知られている。また、ヘテロクロマチンの変化はDNAメチル化やヒストン修飾といった様々なエピジェネティックな修飾状態が変化した結果生じる。そこで本研究では、Gsk3ノックアウトES細胞のエピジェネティック状態を知るために、ヘテロクロマチン構造について解析した。 まず、マウスの野生型ES細胞とGsk3ノックアウトES細胞で、DAPI染色により濃く染色されるヘテロクロマチンの数と面積を求めた。その結果、Gsk3aノックアウト細胞では、核あたりのヘテロクロマチンの数が低下し、面積が増加することが明らかになった。また、Gsk3bノックアウト細胞では同様な傾向だが有意な差が見られ、それぞれのGSK3アイソフォームはクロマチン構造の維持に必要と考えられた。さらに、Gsk3ダブルノックアウト細胞では有意なヘテロクロマチン数の低下と面積の増加が見られ、特にヘテロクロマチン数の低下が著しかった。これらの結果より、GSK3はエピジェネティックな変化を伴って成長因子などによる細胞分化の分子機構に関わっていると考えられる。今後GSK3a,bがクロマチン構造を維持する経路を知るためにはGSK3のターゲット遺伝子におけるエピジェネティック状態の変化を調べることが必要となる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692780800
  • NII論文ID
    130007024488
  • DOI
    10.14882/jrds.104.0.114.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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