殺菌処理が林床に生息する混合栄養植物イチヤクソウの炭素獲得に及ぼす影響

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タイトル別名
  • Effects of fungicide treatments on carbon acquisition of mixotrophic <i>Pyrola japonica</i> living on forest floors

抄録

<p> イチヤクソウ(ツツジ科)は,東アジアの温帯林の林床に生育する多年生の草本植物である.我々はこれまでに,本種の炭素安定同位体比(δ13C)が独立栄養植物と無葉緑性の菌従属栄養植物の中間に位置することから,光合成に加えて,根に定着する菌根菌を通して炭素を得る混合栄養植物であることを示してきた.そこで本研究では,イチヤクソウの炭素獲得に菌根菌が関与することを実証するために,殺菌剤処理により菌根菌による炭素供給網である菌糸の働きを断ち切り,本種のδ13Cおよび菌類群集がどのように変化するかを調べた.成体の周辺土壌に殺菌剤ベノミルの投与を2016年4月から8月の間に9回実施した後,植物体を採取した.その後,葉と果実のδ13Cの計測とITS領域のクローニングによる根系に定着する菌類の同定を行った.その結果,殺菌区では内生菌,対照区ではベニタケ科菌類が多く検出される傾向にあった.殺菌区のδ13Cは葉と果実の両方で対照区よりも低くなる傾向にあった.以上より,イチヤクソウは成長や次世代生産を菌根菌,特にベニタケ科菌類にある程度依存しており,定着する菌類群集に応じて炭素獲得における可塑性を有すると考えられた.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564237987639424
  • NII論文ID
    130007376112
  • DOI
    10.11519/jfsc.129.0_453
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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