• 萩森 伸一
    大阪医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室

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タイトル別名
  • 第118回日本耳鼻咽喉科学会総会モーニングセミナー 鼓膜形成術
  • ダイ118カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ モーニングセミナー コマク ケイセイジュツ

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抄録

<p> 鼓膜形成術は, 鼓膜穿孔に対しその閉鎖を主眼とする手術であるが, 鼓膜以外の中耳伝音系に異常がない場合には聴力改善も得られる. 鼓膜形成術は移植床となる鼓膜固有層・線維性鼓膜輪と移植弁との位置関係から overlay 法, underlay 法, inlay (sandwich) 法に大別される. overlay 法はこれら移植床より移植弁を外側に置く方法である. 古典的な手技であるが, 近年はその施行例数が減少している. underlay 法は移植床より内側に移植弁を置く術式で, 本邦で数多く施行されるフィブリン糊を用いた接着法もこの underlay 法である. 鼓膜皮膚層・固有層・粘膜層の三層すべてを切除する穿孔縁の新鮮創化は耳内から行うことが可能で操作も簡便であるが, 移植弁と穿孔縁とに間隙が生じないよう心掛ける. inlay 法は鼓膜固有層・線維性鼓膜輪と皮膚層との間に移植弁を挟み込む術式である. 皮膚層の欠損が小さく速やかに上皮化が完了する. 移植弁の挟みしろが十分であればフィブリン糊は不要である. しかし耳内操作での皮膚層剥離は困難で, 耳後切開を要する. また移植床作製のため大きく皮膚層ならびに外耳道皮膚を剥離すると, 術後鼓膜の浅在化や anterior blunting が生じる. 鼓膜形成術の穿孔閉鎖率や聴力改善成功率は施設や術式による差はみられるが, どちらも90%程である. 近年は経外耳道内視鏡下耳科手術 (Transcanal Endoscopic Ear Surgery: TEES) の普及で外耳道彎曲例にも簡便な接着法での手術が可能となった. さらに鼓膜再生を促進する新しい技術・手法も開発され, 今後の発展が期待される.</p>

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参考文献 (13)*注記

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