腹腔鏡下マニピュレーターによる穿孔の既往後に妊娠32週で子宮破裂をきたした1例

書誌事項

タイトル別名
  • Spontaneous uterine rupture in pregnancy after iatrogenic perforation by uterine manipulator; a case report
  • 症例報告 腹腔鏡下マニピュレーターによる穿孔の既往後に妊娠32週で子宮破裂をきたした1例
  • ショウレイ ホウコク フククウキョウ カ マニピュレーター ニ ヨル センコウ ノ キオウ ゴ ニ ニンシン 32シュウ デ シキュウ ハレツ オ キタシタ 1レイ

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抄録

<p>近年腹腔鏡下手術の普及に伴い子宮マニピュレーターの使用も増加している.マニピュレーターによる子宮穿孔既往が原因で,妊娠時に子宮破裂をきたした報告はこれまでになく,今回当院で経験したので報告する.症例は37歳1妊0産,35歳時他院で腹腔鏡下両側卵巣嚢腫摘出術を施行した際,マニピュレーターによる子宮底部穿孔があった.その後排卵誘発・人工授精にて単胎妊娠成立し,前医での妊娠管理を開始した.妊娠糖尿病に対する食事療法以外に特記すべきエピソードはなかった.妊娠32週1日子宮収縮の自覚増強および頸管長短縮のため当院へ母体搬送となった.来院時4分ごとの子宮収縮を認め,経腟超音波検査で子宮頸管長は13mmと短縮していたが,内診上子宮口は閉鎖しており,血液検査で感染徴候は認められなかった.胎児心拍数陣痛図モニタリング cardiotocogram(CTG)で胎児well-beingを確認し,ステロイド母体投与と同時に硫酸マグネシウムによる子宮収縮抑制を開始した.妊娠32週5日腹痛の訴えがあり,触診上子宮底部に子宮収縮とは関連しない強い圧痛を認めた.子宮口は未開大で性器出血はなく,CTGで一過性頻脈消失,細変動減少,頻回の遅発性一過性徐脈の異常所見を認めた.経腹超音波検査で羊水を子宮底部のみに認め,子宮破裂を疑い緊急帝王切開を決定した.開腹時腹腔内に約800mlの凝血塊を含む血液貯留があり,子宮底部に4cmの破裂創があり同部より胎胞が視認できた.破裂部位より胎児,胎盤を娩出し,児は女児1926g,Apgar socre 6/8(1分/5分)でNICU管理となった.母体は破裂部を縫合修復し閉腹,術後赤血球濃厚液輸血を行い,経過良好で術後7日目に退院した.本症例から,低侵襲手術の普及に際し,適切なトレーニングによる安全性の追及が重要であることが改めて認識されるとともに,穿孔既往のある症例では定期的に筋層の菲薄化の評価をするなど,より慎重な妊娠管理が必要であると考えられた.〔産婦の進歩70(2):120-125,2018(平成30年5月)〕</p>

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