ザンビア共和国カブウェ鉱床地域における鉛汚染問題:10年間の研究結果と今後の課題

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  • Lead (Pb) pollution in Kabwe Mining area, Zambia: 10 years research achievements and future perspectives

抄録

<p>発表者らは、2008年よりアフリカのザンビア共和国カブウェ市における鉛汚染問題に関わる研究を進めてきた。当該の鉛・亜鉛鉱床地域では、1900年頃から鉱床活動が行われているが、低効率の精錬技術による多くの不純物を含む鉱さいの排出および不適切な廃棄により、地質中の鉛やカドミウムが環境に拡散している。我々の先行研究により、家畜(ニワトリ、ヤギ、ウシ)およびイヌ、野生ラットなどの動物における血中・臓器中の高濃度の鉛蓄積を確認した。さらに、鉱床周辺に住む子供300名の血中鉛濃度は、対象のほぼ全員が研究当時の基準値である5 µg/dLを超過する深刻な状況であることを解明した。この研究結果を受けて、特に子供における治療や地域の環境汚染レベルの低減を目的としたプロジェクト(KAbwe Mine Pollution Amelioration Initiative ~KAMPAI Project~)を2016年より実施している。本発表では、より広範囲のエリアにおける汚染状況の解明や、鉛の暴露経路解明を目的としたプロジェクトの一部結果を発表する。</p><p>ザンビア大学、ザンビア国保健省および所属機関における研究倫理許可を取得し、鉱床付近およびそれ以外のエリアも対象とした約500世帯(父、母、子供)の合計1250名における血液・血漿・尿および子供の糞便試料を採取した。血中鉛濃度は、オンサイトで測定可能なLeadCareⅡを用いて、現地クリニックにおいて測定し、鉛汚染の広がっている範囲の概要を掴むことができた。予想に反して、鉱床から離れた地域でも高濃度の血中鉛が検出される対象者の存在も明らかになった。今後は、血液や糞便における金属濃度および鉛安定同位体比解析により鉛の人への暴露経路を解明し、環境改善手法を検討する。さらに、100年間以上にも及ぶ長期慢性暴露により、動物や人におけるゲノム・エピゲノム修飾、腸内細菌叢コミュニティ変化などの可能性を予想している。近年では、鉛の毒性発現には閾値を設定できないとされているが、長期慢性暴露に伴う毒性発現メカニズムを解明し、効果的な予防法・治療法開発に貢献したい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763031549056
  • NII論文ID
    130007432444
  • DOI
    10.14869/toxpt.45.1.0_p-35
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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