乳用牛の産子に影響を及ぼす妊娠末期のインスリン抵抗性の評価方法の検討

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タイトル別名
  • Evaluation of insulin resistance during late gestation in dairy cows affecting their calf metabolism

抄録

<p> 【目的】妊娠末期の乳用牛の過度なインスリン抵抗性(IR)は,産子の低体重等の悪影響を及ぼすが,牛における適切なIRの評価法はまだ確立されていない。そこで今回は,ヒトのIR評価法のうちインスリンへの感受性を示すHOMA-R(HR)とRQUICKI(RQ),分泌能を示すHOMA-β(HB)と分娩前の母牛や産子の栄養代謝状態との関係を解析し,乳用牛に適したIR評価方法を検討する。【方法】乾乳牛30頭を対象に分娩予定5週間前から分娩まで週2回の採血,産子(雄雌各15頭)の出生時体重測定と採血をし,血液から代謝物と代謝ホルモン濃度を測定した。雄子牛は1週齢の肝臓と筋肉組織から成長関連因子の遺伝子発現を解析した。母牛は分娩3–4週間前の給餌前に簡易的なインスリン感受性試験(インスリン投与量;0.05 IU/BW,採血;投与前,投与後30,45,60分)を実施し,感受性は投与前と投与後の血糖値最低時,分泌能は投与前の血液成分で評価した。RQは低値,HRは高値で感受性が低く,HBは低値で分泌能が低いとし,母牛と産子の血液性状や体重等との相関解析を行った。【結果】インスリン投与前のRQとHRでは,感受性が弱いほど母牛の血中インスリン濃度が高く(P<0.05),産子の出生時体重(P<0.05)と血中GH(P<0.1),IGF-1(P<0.1)濃度が低かった。血糖値最低時のRQとHRでは,感受性が弱いほど母牛の血中レプチン濃度が低く(P<0.05),血糖値(P<0.1)が高くなったが,産子との関係はなかった。HBでは,分泌能が低いほど母牛の血中インスリン(P<0.05)とレプチン(P<0.05)濃度が低く,産子の出生時体重が重かった(P<0.05)。以上より,投与前のRQとHRから感受性が低いと考えられる母牛は胎子の発育に悪影響を及ぼし,HBから分泌能が低いと考えられる母牛の産子は発育が良かったことから,妊娠末期の母牛のIR評価にはインスリン投与前,つまり給餌前のRQとHR,HBが適していることが示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238024532352
  • NII論文ID
    130007487164
  • DOI
    10.14882/jrds.111.0_p-87
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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