P-1-E19 認知症およびミオクロニーてんかんを呈した59歳ダウン症例の神経病理所見

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抄録

はじめに ダウン症において平均生存年齢の上昇に伴い、認知症を発症後、遅発性てんかんを呈する症例が散見される。 症例 初診時52歳、ダウン症(46,XX,inv(9)(p12q13),i(21)(q10))、女性。活動性の低下、無感情を主訴に当院受診。身体部位理解はあるも色や大小、長短理解は乏しかった。発話量の低下に伴い体重減少を認めた。Donepezil投与するも効果は乏しかった。53歳時より1日数回、身体を強直させる発作および上肢や膝にミオクロニー発作が出現した。頭部MRI検査にて大脳皮質の菲薄化、白質容量の低下、脳室拡大、海馬の萎縮を認めた。脳波検査にて前頭葉にδ波が希発した。けいれんは難治であり多剤抗けいれん薬の内服を余儀なくされた。経過中、特発性血小板減少症を併発し膀胱出血を繰り返した。59歳時に呼吸不全により永眠された。 神経病理所見 肉眼的所見:脳萎縮、上側頭回および中脳大脳脚の狭小化を認めた。顕微鏡的所見:1 大脳皮質:神経細胞脱落が顕著であった。amyloidβ(1-42)蛋白陽性の老人斑は前頭葉から後頭葉、海馬に無数認められた。前駆体蛋白であるAmyloid precursor protein(APP)は老人斑に発現していなかった。Tau蛋白陽性の神経細胞が深部灰白質に認められた。2 脳幹:神経細胞にリポフスチン沈着を認めた。3 基底核:血管周囲に石灰化を多数認めた。4 小脳Purkinje細胞の脱落および白質空砲化を認めた。5 脳血管:amyloidβ(1-42)蛋白沈着は認められなかった。 結語 1 ダウン症において認知症後の遅発性てんかん発症に注意を要する。2 APP遺伝子は21番染色体上に存在し(21q21.2)、ダウン症の老人斑に早期から発現することが報告されている。本症例の老人斑にはAPPは発現しておらずすでにamyloidβに変換されたものと考えられた。

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