無治療で10年以上経過した冠動脈–左室瘻の1例

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  • A Case of Coronary Artery Fistula to Left Ventricle without Treatment for More 10 Years after Diagnosis

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抄録

<p>症例は40代男性.2002年の健康診断で拡張期雑音を指摘され当院受診.心エコー図検査では著明に拡張した左冠動脈主幹部~左回旋枝が左室へ開口しており,冠動脈–左室瘻を疑った.心臓カテーテル検査を施行した結果,左回旋枝からの冠動脈–左室瘻と診断した.労作時の息切れや胸痛などの自覚症状は認めず,運動負荷心筋血流シンチグラフィでも明らかな虚血所見は認めなかったため,手術適応はないと判断され経過観察となった.経過中,2008年より通院を自己中断,その後2014年の健康診断で心電図異常を指摘され,今回の精査受診となった.心エコー図検査で左室壁の肥厚と左房径・左室拡張末期径・収縮末期径の拡大を認めた.壁運動異常の出現は認めなかった.2003年の心エコー図検査結果と比較して左室壁肥厚・左房拡大,左室拡張末期径・収縮末期径の拡大を認めた.虚血性心疾患の精査を勧めたが,労作時の息切れや胸痛などの自覚症状がないことと,患者本人がこれ以上の検査を希望しなかったことから,経過観察の方針となった.しかし加齢とともに症状や心機能に変化を生じることが予想され,将来的には外科的な介入が必要になる可能性がある.冠動脈–左室瘻は手術施行症例の報告が多く,自然経過による予後は未だ明らかとなっていない.今回,我々は10年以上無治療で経過した,左回旋枝から左室腔に開口する冠動脈–左室瘻の症例を経験したので報告する.</p>

収録刊行物

  • 超音波検査技術

    超音波検査技術 44 (3), 378-384, 2019-06-01

    一般社団法人 日本超音波検査学会

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