感冒後嗅覚障害の嗅素別評価と予後について

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  • EVALUATION BY EACH ODOR AND PROGNOSIS IN PATIENTS WITH POST-VIRAL OLFACTORY DYSFUNCTION

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抄録

<p> 感冒後嗅覚障害は上気道感染を契機に生じる嗅覚障害で, 嗅覚障害疾患の約20%を占めるとされている。 その病態生理は, ウイルスによる嗅細胞の障害や中枢経路の障害などが報告されているが未だ詳細は解明されていない。 臨床診療上, 基準嗅力検査や嗅覚同定能検査の嗅素による結果や回復程度の違いをしばしば経験する。 各嗅素の障害程度や回復程度を調査することは病態解明に繋がり, 新たな治療の糸口となる可能性がある。 しかしながら嗅覚障害度の評価や治療効果判定は, 平均認知域値をもってされ, 各嗅素の結果は反映されない。 本研究では両検査の嗅素別変化と, 予後に影響する因子について検討し, 感冒後嗅覚障害の病態や最適な治療について考察した。</p><p></p><p> 対象は2009年5月から2015年3月に東京慈恵会医科大学附属病院耳鼻咽喉科嗅覚外来を受診した患者のうち感冒後嗅覚障害と診断された109名とし, 初診時および初診から約3ヵ月後, 約9ヵ月後のそれぞれの検査結果を分析し治療効果判定を行った。 全体の改善率は58.3%であり, 治療経過の中で基準嗅力検査のA~Eすべての嗅素で有意な改善を認めた。 予後に影響する因子は病悩期間と E のスカトールの初診時検知域値であった。 すなわち病悩期間が長いことと, 初診時の E (スカトール) のにおいの結果が悪いと予後が悪いという結果であり, においの種類によって障害程度や回復経緯が異なることが示唆された。 本研究の結果から, におい別の評価や, 障害の強いにおいに焦点を当てた治療と生活指導が今後必要であると考える。</p>

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