ジフェニルアルシン酸によるヒト・ラット小脳由来アストロサイトの異常活性化と感受性における種差

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  • Aberrant cellular activation in human and rat cerebellar astrocytes exposed to diphenylarsinic acid

抄録

<p> ジフェニルアルシン酸(DPAA)は、茨城県神栖市で発生した井戸水ヒ素汚染事故の原因物質であり、井戸水を使用していた住民に小脳症状を主とする神経症状がみられた。我々はこれまでに、DPAAはラット小脳由来培養アストロサイト(NRA)において、濃度・時間依存的に細胞増殖亢進と続く細胞死、低濃度長時間曝露(10 µM、96時間)により酸化ストレス応答因子(Nrf2、HO-1、およびHsp70)の発現誘導、MAPキナーゼ(ERK1/2、p38MAPK、SAPK/JNK)の活性化、転写因子(CREB、c-Jun、およびc-Fos)の活性化を引き起こし、他にもMCP-1やIL-6などの脳内サイトカインの分泌誘導、グルタチオンの異常放出を引き起こすことなどを明らかにしてきた。本研究では、ヒト小脳由来アストロサイト(NHA)におけるDPAAの影響を評価し、NRAと比較した。DPAAは NRAおよびNHAともにDMEM/F-12にサプリメントを加えた無血清培養液中にて曝露した。細胞増殖亢進・細胞死についてはNRAおよびNHAともに濃度・時間依存的に細胞増殖亢進・細胞死を示したが、濃度についてNHAはNRAよりも抵抗性が高かった。また、NRAにおいてDPAAばく露(10 µM、96時間)は酸化ストレス応答因子発現誘導、MAPキナーゼ活性化、および転写因子活性化を示したが、NHAにおいてはばく露96時間では10 µMでは全く影響がみられず、より高濃度(50 µM)において10 µM DPAAばく露のNRAと同様の異常活性化がみられた。これらの結果は、DPAAはヒトおよびラット小脳由来アストロサイトに同様の影響を引き起こすが、感受性には大きな種差があることを意味し、感受性の高いラット由来の細胞で評価する事は有用であるもののヒトにおけるリスクを考える際には濃度について慎重に考慮する必要がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288152357504
  • NII論文ID
    130007677231
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_p-112
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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