rTMSとリハビリテーションの併用によるパーキンソン病患者の歩行の変化

DOI
  • 森岡 直輝
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 松﨑 英章
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 鶴田 大祐
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 吉岡 慶
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 大石 優利亜
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 寒竹 啓太
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 今辻 和也
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 小田 太士
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーション科
  • 髙橋 真紀
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>近年,パーキンソン病(PD)の運動症状に対し非侵襲的治療として反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)治療の効果が報告されており、関心が高まっている.また,非薬物療法としてリハビリテーション(リハ)は治療の一つとして確立されつつあるが,それらを併用し治療効果を検証した報告は少なく,歩行への影響については不明である.</p><p>今回,我々は三次元動作解析装置を用いてrTMSとリハの併用が歩行に与える影響を検討した.</p><p>【方法】</p><p>対象は2015年8月~2018年3月の間,発症後6ヶ月以上経過したHoehn-Yahr分類Ⅱ~ⅣのPD患者とした.また,治療中に抗パーキンソン薬の変更はなかった.</p><p>rTMSは補足運動野への低頻度刺激を1日1回,1セッションあたり20分間,計15セッション施行した.rTMS直後には理学療法士による関節可動域運動,筋力増強運動,バランス運動,歩行練習等の個別リハ(1時間)を実施し,筋力増強運動を中心としたセルフエクササイズ(1時間程度)を個別に指導した.</p><p>評価は治療開始前と治療後に行い,運動機能は日本語版unified Parkinson’s disease rating scale Part Ⅲ(UPDRS PartⅢ),下肢筋力は重症側の最大膝伸展筋力を測定した.歩行解析では三次元動作解析システム(VICON-NEXUS2)にて,歩行速度と重症側下肢について歩幅,ケイデンス,矢状面における股関節・膝関節・足関節の運動可動域,体幹(前後傾),骨盤(前後傾・回旋・挙上)の角度を3歩行周期で測定し,変化の算出を行った.統計学的検討はwilcoxon符号付順位和検定を行い,有意水準を5%とした.統計解析には,EZR version1.37を使用した.</p><p>【結果】</p><p>対象者はPD患者9名(男性3名,女性6名)で,年齢75.0±6.7歳,Hoehn-Yahr分類2.8±0.7,罹患期間5.3±4.1年であった。UPDRS PartⅢ,最大膝伸展筋力,歩行速度,歩幅,股関節運動可動域,体幹前傾角度において有意な改善を認めた(p<0.05).また,その他の膝関節・足関節運動可動域,骨盤角度は改善傾向(p<0.1)であったが有意差は認められず,ケイデンスには変化がみられなかった.</p><p>【考察】</p><p>PDに対し補足運動野へのrTMSとリハを実施したところ,PDの運動症状,歩行能力が改善した.今回,UPDRS PartⅢで評価したPDの運動症状の変化は先行研究のrTMSあるいはリハ単独実施の結果と比較すると大きな効果であるが,これは治療プロトコルの違いの他,rTMSとリハを併用した相加もしくは相乗効果による可能性がある.</p><p>歩行速度の改善に関しては上記の運動症状の改善に加え,三次元動作解析装置により体幹前傾角度が減少し,股関節の運動可動域および歩幅の拡大が認められたこと,最大膝伸展筋力の結果から推測される下肢筋力の向上が要因と考えられる.</p><p>今回,三次元動作解析装置を用いたことで歩行時の詳細な速度や歩幅,関節角度を数値化でき,より客観的な歩行分析,効果判定を可能とした.</p><p>今後対象人数の増加などさらに検討を行うことで,より正確且つ有益な結果を追求していく必要がある.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>当院の倫理委員会の承認を得て、対象者全員に本研究の目的・内容を口頭にて十分に説明し、同意の上実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-159_1-E-159_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111584128
  • NII論文ID
    130007692993
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-159_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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