定量評価による小脳梗塞者の病巣同定と歩行自立度との関係性について

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抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>歩行における小脳は前庭小脳神経回路、脊髄小脳神経回路、大脳小脳神経回路の3つの神経回路によって筋緊張の制御,肢運動の位相制御に関与し,それらを統合した結果の肢間協調(interlimb coordination)に中心的役割を果たしている.これらの神経回路の機能局在は小脳の部位によって異なる.それらの機能局在を考慮した定量評価によるCT画像解析と歩行自立度との関係性についての報告は少ない.そこで,CT画像を用いて小脳梗塞患者における歩行自立度との関係性について調査を行った.</p><p>【方法】</p><p>対象者は平成26年12月1日~平成30年4月31日の期間,当院回リハ病棟に在棟した小脳梗塞患者11名(男性10名:年齢71.7±11.02歳,女性1名:年齢82±0歳)とし,初発梗塞患者を対象とした.退院時FIM移動項目にて6点以上を歩行自立群,5点以下を歩行非自立群とした.方法はGE社製CTを用い,回リハ病棟入院時の頭部所見にて小脳梗塞病巣が最目視可能なスライスレベルにて解析を行った.後小脳切痕と第4脳室を結ぶ線(中心線)を基準に中心線から小脳半球最前端点を結ぶ距離(a),中心線から小脳半球最長端点を結ぶ距離(c),中心線から小脳半球最後端点を結ぶ距離(p),小脳半球最前端点と小脳半球最後端点を結ぶ距離(f)を設定.病巣の同定として,中心線から梗塞巣最内側端点までの距離を(ML),梗塞巣の最外側端点までの距離を(LL),小脳半球最後端点から梗塞巣最前端点までの距離を(AL),小脳半球最後端点から病巣最後端点までの距離を(PL)にて計測.さらにML・LLとa・c・pの比率(M-Ratio,L-Ratio),AL・PLとfの比率(A-Ratio,P-Ratio)にて同定とした.病巣範囲に関してはFree hand Region of Interest(F-ROI)にて面積を計測した.統計解析はR ver2.8.1を使用し,退院時歩行自立群・歩行非自立群を目的変数,M-Ratio,L-Ratio,A-Ratio,P-Ratio,F-ROIを説明変数とした単変量解析を実施.統計学的有意水準を5%とした.</p><p>【結果】</p><p>歩行自立群5名/歩行非自立群6名で,年齢67.8±8.8歳/年齢76.7±10.9歳,M-Ratio 0.29(0.06-0.4) / 0.04(0-0.55)において有意差を認めた.L-Ratio,A-Ratio,P-Ratio,F-ROIにおいて有意差を認めなかった.歩行自立群の境界としてはM-Ratioにおいて0.113が境界点であった.</p><p>【考察】</p><p>M-Ratioが内側偏位し小脳虫部に近いほど歩行自立度に影響することが示された.解剖学的観点からも合致する結果となり定量評価にて示せたことはエビデンス構築の一助と成り得る.しかし,本研究からはA-Ratio,P-Ratioつまり小脳脚近位損傷であっても歩行自立度には影響を及ぼさなかった.小脳脚部は求心性・遠心性神経回路の通過経路であるため,今後は小脳脚などの神経通過経路に着目した定量評価を追加研究するとともに症例数を増やした検討も実施して行きたいと考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき,本研究に使用するデータ管理は当院倫理規定に準じて行い,全て匿名化された既存データのみを用い,後方視的に行った.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-182_1-E-182_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087923712
  • NII論文ID
    130007693068
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-182_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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