脳卒中片麻痺患者における行動観察による高次脳機能評価と移乗動作の関連性およびカットオフ値の検討

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • -Behavioral Assessment of Attentional Disturbance,認知関連行動アセスメントに着目して-

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>脳卒中片麻痺患者の移乗動作は早期の自立度の向上に必要な要素の1つである。過去の報告では移乗の自立に関連する認知機能としてMMSEによる報告が多い。しかし強い失語・高次脳機能障害があると実施困難になる検査も多い。近年Behavioral Assessment of Attentional Disturbance(BAAD)や認知関連行動アセスメント(CBA)など行動観察による高次脳機能評価が報告されている。我々はCBAが移乗の可否に関連していることを報告したが,カットオフ値の検討はできていない。本研究の目的は移乗自立の可否に関してBAAD,CBAの有用性とカットオフ値を検討することである。</p><p>【方法】</p><p>対象は平成28年6月から平成30年5月まで当院回復期病棟に入院している初発のテント上脳卒中片麻痺患者とした。また座位能力の影響を考慮しFunctional Assessment for Control of Trunkが2点未満の患者は対象から除外し,最終的に114名を対象とした。内訳は男性58人,女性56人,年齢68.8±13.76歳,下肢Br.stage Ⅰ:1名, II:10 名, III:20名, IV:18名, V:28名, VI:37名, MMSEは24.7±5.39(13名は失語・高次脳機能障害等の影響で検査不可)であった。BAADは問題行動6項目を4段階で評価(0-18点)、CBAは意識・感情・注意・記憶・判断・病識の6項目を5段階で評価(6-30点)した。移乗自立の可否はFIMのベッド車椅子移乗が6点以上を自立とした。統計学分析は従属変数を移乗自立の可否,説明変数を年齢,下肢Br.Stage,BAAD合計,CBA合計とした。多重共線性を考慮しスピアマンの順位相関係数が0.8以上の場合は一方を変数から除外し,ステップワイズ多重ロジスティック回帰分析をAIC基準変数増減法にて実施した。また有意差が見られた項目に対してROC曲線を作成し,Yuden Indexよりカットオフ値を求めた。なお統計ソフトはEZR 1.36 を用い,有意水準5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p>移乗自立の可否は非自立47名、自立67名であった。多重共線性は見られず,移乗の自立の有無には下肢Br.stage(odds:2.29, 95%CI:1.62-3.23, p<0.01, adjust;odds:4.26, 95%CI:2.25-8.06, p<0.01), BAAD(odds:0.65, 95%CI:0.55-0.76, p<0.01, adjust;odds:0.68, 95%CI:0.54-0.86, p<0.01), CBA(odds:1.29, 95%CI:1.17-1.43, p<0.01, adjust;odds:1.27, 95%CI:1.07-1.51, p<0.01)で関連を認めた(モデルカイ二乗検定:p<0.01, HosmerとLemeshow検定:p=0.56, 判別的中率:92.1%)。年齢は変数から除外された。なおカットオフ値は下肢Br.stage:Ⅵ,BAAD:3点,CBA:25点であった。</p><p>【考察】</p><p>移乗自立の可否に下肢の麻痺とBAAD、CBA合計点が関与していた。過去の報告でCBAはFIMと関連があり、BAADは移乗の改善に関連があることが報告されている。今回の結果もそれを支持するものと考えられた。これらより移乗の自立の有無に関する高次脳機能検査としてCBA、BAADは共に有用であることが示唆された。今後は縦断研究や運動項目評価を加えた予測モデルの検討も必要であると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は当院倫理委員会の承認を得た(承認番号:FRH2018-R012)。本研究は当院リハビリテーション科における評価データベースからの解析であり,全て匿名化された既存データのみで検討を行った。また本研究による利益の発生は行われていない。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-93_2-E-93_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134515968
  • NII論文ID
    130007693124
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-93_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ